映画館でポスターが裏返しに貼ってあるのを目撃した時は衝撃を受けましたが・・・。
隣の『ラビット・ホラー3D』はちゃんと貼ってあるんですけどね・・・。
という事で、ずっと観たかった『アジョシ』、観てきましたよ!
なんなんですか、この映画は。隣のおじさん、最強じゃないですか。
やっぱキム・セロンちゃん演じる少女・ソミの存在がデカすぎでしょ。
彼女の可愛らしさたるや・・・
もうなんなんですか。最強じゃないですか。
主人公テシク(ウォンビン)にキラキラした瞳を向けて『じゃじゃーん♪』なんて自作のネイルアートを自慢してみたりして、ちょっぴりおしゃまでカワイイったらありゃしなイミダ。
こんなに可愛いソミちゃんなんですが、
一見無邪気そうに見えて、とてつなく可哀相な境遇なんです。
父親は超DV野郎で母親は薬物中毒で家庭環境は劣悪の極み。
ソミちゃんは親の愛もロクに知らず、家庭がこんな感じだからご近所さんや同級生、その保護者にまで軽蔑されて、所謂「あの子と遊んじゃダメよ」状態。
そんなこんなで完全ひとりぼっちで生きているソミちゃんですが、唯一、隣の家に住んでる質屋のおじさん・テシクには心を許しているって設定。
テシクを「アジョシ(おじさん)」と呼んではちょくちょく遊びに行ってるんです(一方的に押しかけるスタイルで)。またテシクの「迷惑そうにしながらも、実際まんざらでもない様子」も微笑ましくてイイじゃないですか。
そんなソミが急に涙を流して「おじさんの事まで嫌いになっちゃったら、私の好きな人は1人もいなくなっちゃう・・・。」って言うシーンなんか、「誰がこんなベタなお涙頂戴シーンで泣くかよ!ばーか!」と泣きながら思いました(;_;)。
キム・セロンちゃん、おそらく『冬の小鳥』での彼女の名演が評価されてのフックアップなんでしょうけど、今回も本当に素晴らしい演技を見せてくれます。
すっかり僕の心は彼女に奪われてサンチュに巻かれましたよ!
ところがそんな可愛いソミちゃんが悪の組織に誘拐されてしまいます!
しかもその組織ってのが「人をさらって臓器売買」の業者だっていうんだからさあ大変だ。
ソミちゃんの母親もドライヤーを使ったやけに陰湿な拷問の後、無残にも殺されて体の中身をからっぽにされちゃいます。
この辺からはもう悪の組織とやらが憎くて憎くて・・・。
なんせ悪の組織のボス「マンソク兄弟」が悪いのなんのって、ただ事じゃないんですよ。
素晴らしい演技力で「俺たちがムカつきたい悪役」を見事に演じきってくれます。
特に弟(キム・ソンオ)がね、殺人や拷問をレクリエーションの一環だと思ってるような「ちょっとイッちゃってる男」で腹立つんですよね!
で、隣のおじさんテシクが、彼女を救出に向かいます。
テシクってば、実は元アメリカ情報特殊部隊出身で超ド級の戦闘スキルの持ち主なんです!
戦闘スキルだけでなく、自己散髪能力も並々ならぬ腕前です。
「もう坊主にしちまえよ!」と思わないでもなかったですが。
テシクは単身、悪のアジトに正面から乗り込み、悪い連中を一網打尽に駆逐していきます!
ここがホント「爽快」の一語に尽きる!
アジトにいる悪者は17人。こいつらにテシクが1人で戦いを挑みます。
17対1で戦うってだけでも随分あげぽよな展開ですが、その戦いぶりというのが拳銃&ナイフの血みどろハイパーバトル!
しかもこの壮絶な戦いの直前には、「ソニはどこだ!?」と叫ぶテシクにある物が手渡されます。
それはガラス瓶に入った2つの目玉・・・。うわ~・・・。
テシクはどうしようもない怒りと悲しみに打ち震えながら報復としての大殺戮を繰り広げるんですよ!
かつてこれほどまでに泣ける殺戮シーンがあったでしょうか?
あるでしょうけど、なかったんじゃないかと思いたい!
「お前らの金歯以外は喰い尽くしてやる!」と、よく分からないけどなんだか凄い宣告が印象的でしたね!
そしてカッケーのがこの後!
テシク VS 悪の組織専属のベトナム人殺し屋ラム・ロワンという、1対1のタイマン・ガチンコバトル!
しかも敢えてお互いに銃を捨ててナイフを構えて戦うという肉弾戦に突入するんです!
この時ラム・ロワンは正義だの悪だのイデオロギーは別として、「同じ戦闘系男子としての能力を競いたい」と思ってテシクに戦いを挑む訳ですね。
殺しを生業とする者同士の本能とプライドがぶつかりあう展開がサイコーなんですが!
それもさることながら、このナイフを使ったバトルシーンが本当にお見事でして、手持ちカメラでかなり接写気味に撮る事で臨場感が物凄いし、戦い方も非常にトリッキーで楽しいんですね。
戦ってる途中で相手の指をひねったり、相手の手を歯で噛んで押さえつけて自由を奪うとか、「よくこんなコト考えつくな~!」って感心しました。
よく考えたら、主人公の最大のライバルが外人っていうのも凄いアイディアですけどね。
このシーンに限らず、アクションシーンは沢山あるんですが、戦い方のバリエーションが豊富で観てて飽きない工夫が施されています。
印象的だったのはクラブ(ディスコ)のトイレで戦うシーン。
個室を上手く使ってましたね。幾つもある個室のドコに潜んでいるのか?とか、個室の中での狭所アクションとか。
特にテシクが使う独特の武術がカッコイイ。
カンフーでも合気道でもない、やたら敵と接近して戦うスタイルで興味深かったですね。
なんでも、ボーン・シリーズでマット・デイモンが使っている東南アジアの格闘技など3種を組み合わせた独自の型だそうです。
当然ながら、悪の組織のボス・マンソク兄弟も例外なく惨殺しちゃいますよ~☆
特にムカつくマンソク弟に執行される釘打ち機による拷問&手作り時限装置による爆死には「あら、いい拷問♪」って感じで100万点差し上げたくなります。
兄(キム・ヒウォン)の死に様は弟に比べれば若干地味といえば地味なんですが、それでも思う存分、忍び寄る死の恐怖に怯えながら不細工に死んでいってくれたので良しとしましょう!
見苦しく怯えるマンソク兄と冷静に発砲し続けるテシクのコントラストが素敵でした。
「ムカつく悪役にはブザマな死に際が似合う」っていうのは世界共通の認識なんですね。
このマンソク兄弟2人の演技(生前の憎たらしさ&往生際の醜さ)はホントお見事でした。
気になる点も幾つかあったんですよね。
やっぱあの韓国警察の雑さっていうんですか?
韓国警察のレベルの低さって言うのは前々から指摘されていますが、いくらなんでもここまでユルイと興ざめします。
だいたい、基本的に捜査がいちいちノロすぎます!!
「何かが起こってからでは遅いんだ」っていう事態だろうが何かが起こるまで動きませんし、「ホワイトハウスに偽の脅迫メールを送って・・・」なんて中学生レベルの捜査方法(しかも案外上手くいく)も気になりました。
え、なに、ホワイトハウスって馬鹿なの?
ちょっとどうでもいい警察の描写が多かったような気がしますね。どうせ大した捜査しないのに・・・。
そしてテシクの無謀さや無計画行動も気になります。
冷静なように見えて結構、後先考えず行動するんですよね・・・。
マンソク兄から「弟に何かあったらソニの命はないぞ!」って警告されてるんだからさ、ソニを救出するつもりがあるんなら、あそこでマンソク弟を拷問&殺害しちゃだめでしょ?
たまたまソニは助かったけどさ、あれはホントにたまたまじゃん?
なのにテシクさんったらクライマックスで目玉渡されて激怒しちゃって、「それ半分くらいはオマエのせいじゃね?」って思わずにはいられませんでしたよ。
あと、「敵のアジトに行くとき、もうちょっと急げよ」とか、警察官に見つからないように行動する時、「全身黒づくめでキャップかぶってもスゲー目立ってるよ」
とか色々あるけどさ、、、。
そんな感じで気になる所も多々あるんですが、前述のとおり、良すぎるシーンが良すぎるから積極的に目をつぶりたいと思います!
で、この映画の良さの1つとして、主人公テシクがなぜ血の繋がりもない近所の女の子ソニを愛して、なぜ命がけで彼女を助けようと思うのか、その理由の描き方が素晴らしいと思うんですよ。
「自分の娘が生きていたらこれぐらいの歳だろうな」とか「孤独に生きる者同士の共感・共鳴」とか、理由も1つじゃなく多面的だし、「ソニを救済する事」が「テシク自身の魂の救済する事」にも繋がる。
しかもそれをセリフで説明しちゃうような野暮な演出はないんですよ。
テシクやソニのバックボーンを要所要所で挟み込んだり、2人の微妙な表情の変化や、感情の機微で、それとなく見せていく。
2人の絆の見せ方がとてもスマートなんです。
だから2人の繋がりが魅力的だし、感動的だし、ラストシーンでテシクがソニを抱きしめながら言うの「一人で生きていくんだぞ」ってセリフが胸を打つじゃないですか。
ソニの救出後、人を殺して汚れた手で彼女を抱きしめられなかったテシクが、最後の最後で「一度だけ抱きしめさせてくれ」って思わず言っちゃうところも素敵でした。
映画を観た後しばらくしても「ソニちゃん、今頃どうしてるのかな?」って思いを馳せちゃうような、とっても素敵な映画でした。