2011年10月24日月曜日

監督失格

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映画『監督失格』オフィシャルサイト

 

平野勝之というAV監督がいました。
彼は80年代~90年代にかけて活躍したAV監督で、V&RプランニングというAVメーカーで数々のオモロイけどヌケない名作AVを生み出した異色のAV監督としてその名を馳せました。

林由美香というAV女優がいました。大きな瞳の正統派美少女でありながらハードな絡みもガンガンやっちゃうギャップがウケて、たちまちAV界のトップアイドルの座に君臨しました。

2人は不倫関係にありました。

そんな2人が東京から北海道までの自転車旅行に挑戦。kantoku420110905183851

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過酷を極めたその旅の一部始終が平野監督によって撮影され、「わくわく不倫旅行」なるAV作品として発表され話題となります。

その後、平野監督が由美香にフラレるという形で2人のイケない恋愛関係は終了。

平野監督はショックでロクな作品が作れなくなってしまいます。

いつまでも引きずってても仕方ない!と、なんとか立ち直ろうと思った平野監督は、もう一度だけ由美香に会って何か新しい作品を撮ろうとします。

しかし、そんな平野監督を待ち構えていたのは、由美香の突然の死でした。

 

 

僕がこの平野監督と林由美香という2人の存在を知ったのは高校生の時。
当時テレビ朝日系列で放送されていた深夜番組「トゥナイト2」で知ったんですね。
当時は「トゥナイト2」なんて信憑性に問題のあるトレンド情報をお届けする番組だという認識しかなかったんですが、今にしてみれば意外とサブカル情報満載だったんですね。

 

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僕はAV女優としての林由美香の活躍ぶりをリアルタイムでは殆ど知りません。
なにせ彼女が現役でバリバリやってた当時、僕は中高生だったので。

僕より5~10歳くらい上の世代の男性諸氏の右手のアイドルじゃないですかね?
僕らの世代でいうと小室友里みたいな位置だったのかな~?と思います。意識的かつ能動的にAV女優をやっていて、「面白い作品を作るためなら何でもやる」っていう作り手側の視点まで持ったようなスター女優っていう感じ。

仮に僕がリアルタイムで林由美香のAV嬢時代を知っていたとしても、彼女は貧乳なので僕の射精射程範囲外だったと思います。

 

さて、このドキュメンタリー映画『監督失格』ですが、福岡では天神東宝1館のみの上映ということで、はるばる行って参りました。初日の10月1日(土)の夕方の回。映画の日・しかも週末ということもあって映画館にお客さんが多かったんですが、その殆どがちょうど同時刻に上映されてた「モテキ」の上映スクリーンに吸い込まれていくという現実も目撃しました。


そんなことはさておき、映画の話に戻ります。

 

前半は1997年に劇場公開された「由美香」のダイジェスト的内容になっています。

平野監督と林由美香、不倫関係にある2人が1ヶ月かけて東京~北海道まで自転車で旅するというもの。

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林由美香と平野監督の関係について何ら予備知識の無い人でも、2人のどうかしてる関係がつぶさに見て取れると思います。

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平野監督や林由美香の魅力とダメさ加減が過不足無く詰まっている見事な編集でした。

由美香の魅力的な表情や仕草、キュートさと天真爛漫さ、それに惹かれていく平野勝之のダメさだったり面倒くさい所 etc・・・ がギュッと濃縮されており、上手く編集してあります。
非常に丁寧なダイジェストだな、という印象を受けました。

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林由美香がカメラ意識したり、何かに媚びたりせず、極めて自然にキュートなところがホント素晴らしい。

でも、それだけではないんですね。
不倫関係にある2人が1ヶ月かけて北海道まで自転車で旅してそれが世に公開されるなんて倫理的に完全アウトなんですが、にもかかわらず思わず行動に移しちゃった2人の旅の記録そのものが非常に面白いんです。
「イケナイ事の魅力に惹かれていってる人たちの思い」だったり「正しさを超えた欲望を見つけちゃった人たちの生き方」がわかりやすく編集されていてとても良かったです。

印象的だったのは、平野監督にカメラを渡された林由美香が1人で撮影するシーンが少しだけあるんですが、彼女がカメラを持つと一気に彼女独特の映像になるんですよ。本人は上手く撮ろうなんて意識は全くないし鼻歌なんか歌ってイイ気なもんなんですが、画面は完全に由美香色になってるんです。表現の神様に選ばれたような女の子だな~って思いました。

なんてったって彼女は監督に向かって「監督失格ね」って言えちゃうAV女優ですからね。


ちなみに元の「由美香」という作品は元はAVだったものが、後年に劇場用作品として公開されたもの。
AVといってもかなりエグイ部類です。カップラーメンにウンコを入れて食ってゲロ吐いてぶっ倒れるなど非常にエレガントなシーンもあるので、普通の人は掘り返してまで観なくていいと思います(笑)。

それでも「お金を払ってでも観たい!」という物好きな方はコチラからご覧になれます。

 

 

その後、舞台は一気に2005年へと移ります。


30歳を過ぎてからの林由美香の様子も非常に興味深かったですね。

なんだか恋愛至上主義的というか、恋愛や結婚への意識の高さが異常なんですよね。
しかも、自分のことだけを見ていてくれる完全無欠の王子様みたいな男性を求めている。
35歳にもなろうかって女が彼氏の携帯をチェックするとか、それどうなんだ?っていう(笑)。

とにかく誰かに目いっぱい愛されたくて仕方ない人なんだろうなと思いました。
それが「面白い作品になるなら何だってやる」っていう彼女の女優としての姿勢とも繋がってるんでしょうね。

 

その後、平野監督は由美香の35歳の誕生日に彼女と会って撮影をする約束をします。
しかし、待てど暮らせど彼女は待ち合わせ場所に姿を現さない。なんど電話をかけても繋がらず、一切連絡もとれない。
彼女は絶対に仕事をすっぽかすような女優じゃない。これはオカシイ!という事になり、急遽由美香ママを呼んで合鍵を使って由美香の自宅に入ることに。


この由美香の自宅に突入する場面の緊張感がハンパじゃないんですよ。
こっちとしてはこの先に待ち構えている悲劇を知ってるわけですからね。もう見てらんないよ!って思いながらも視線はスクリーンに釘付けっていう状態でした。

そして由美香の自宅で変わり果てた彼女の姿を最初に発見してしまう平野監督。
一瞬で事態を把握した由美香ママの激しい慟哭。
その一部始終を偶然にもカメラが捉えているんです。
この一連のシーンはどんな言葉で表現しても安っぽく感じられるほど壮絶。

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悲報を受けて現場に駆けつけたカンパニー松尾氏の視点も彼独特の語り口があって切ない。


 

そしてなによりこの映画が傑作となった理由の1つに、由美香ママの魅力を引き出せてる点にあると思います。
彼女の優しさと強さ、最愛の娘を失った寂しさ、それを自分なりに乗り越えようとしている様子が短い映像の中にもキッチリ収められているんですよね。

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見てくださいよ、この由美香ママの写真。
気をつけて下さいね、パパじゃないですよ、ママですよ。
シャツインでベルトが腰のやたら高い位置にあるところとか、胸ポケットのボールペンなんかグッとくるんですよね。
女性が見た目よりも機能性を重視したファッションになったときの味わい深さは格別なものがありますね。


 

最後、エンドクレジットで矢野顕子の「しあわせな、バカタレ」って曲が流れるんですが、これがこの救い無き物語に光を与えてくれるいい効果をもたらしてくれています。。
この曲なしで映画を観ただけではただ心に鋭く深い爪痕が残っただけになったと思うんですね。
でも最後にこの曲がかかる事で「でも、それでいいんだよ。仕方ないことだよ。」つって悲痛な気持ちをほぐしてくれる。音楽が僕達の肩にそっと手を置いてくれるんです。
このエンディング曲があるのと無いのでは大きく違う印象だったでしょうね。


終盤、この「監督失格」の編集作業に取りかかっている平野監督がカメラに向かって「たった今気付きました。由美香が僕に取り憑いてるんじゃなく、僕が由美香に執着していたんだ。」と独白するシーン。

僕はびっくりしました。この人、そんな事も分かってなかったのかと。第三者の僕には最初からそうとしか見えてなかったから。
その完全に自分を客観視出来なくなっていたんだという事が凄く興味深かったです。

だからその後の平野監督が嗚咽と絶叫を繰り返しながら自転車で爆走するシーンは、その異様さに思わず苦笑しながらも得体の知れぬシンパシーを感じました。

 

「最愛の人が死ぬ」という経験。
これは誰にだってやってくる事なんですよね。
もしかしたらそれが明日やってくるかもしれない。

それでも僕達は誰かを愛して生きていくしかないんですね。悲しみに怯えていては誰かを愛したりなんか出来ないから。

愛なんて錯覚にすぎないのは分かっているけれど、それでも構わないと思います。
バカタレであっても幸せに生きていけるんなら、それは素敵な事じゃないですか。

だから自分や恋人がバカタレなりの幸せを感じられている間に、相手にちゃんと想いを伝えておいた方がいいですね。

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恋人・平野勝之が回すカメラに向かって「幸せだよ。」とささやくその表情を思い返しながら、そんなことを考えました。

 

 

いくつか物足りなかった点もありました。

まず1つに由美香が亡くなって以降の平野監督の喪失感や苦悩があまり描写されていなかったこと。ほとんどテロップで淡々と説明されちゃうんですよね。そりゃ好きな女が死んだら誰でも悲しいのは分かるけどさ。具体的にどう悲しんだのか、どんな思いでいたのかぐらい独り語りでもいいから教えてくれたってイイじゃないの、と。

 

そして何より不満が残ったのは、不倫された側である平野監督の奥さんがこの映画の中では完全不在なんですよね。

奥さんが平野監督と由美香の関係をどう思っていたのか、ちゃんと取材して撮るべきだったと思います。そうでないと、単に都合良く自己陶酔して切なくなってる男の話になっちゃうじゃないですか。

自己陶酔でも全然イイんですけど、「自分と向き合ったうえでの自己陶酔」と、そうでない自己陶酔では、質が全然違うと思うんですよね。
さらけだすんだったら、都合の悪い部分もキッチリ全部さらけだすような潔さが欲しかったな、と。

前述した過去作品「由美香」の中では平野監督の奥さんが登場して、「AV監督の旦那の仕事だから」と2人の関係を割り切って公認していました。
結婚してるんだからダンナの不倫をそんなアッサリ割り切れる訳ないんだけど、でもきちんとダンナのやりたい事を理解して協力してあげてるという尋常ならざる人間力を持った奥さんなんですよね。

聞くところによれば、奥さんとは3年前に離婚されたそうです。
ということは、林由美香が亡くなってから3年間も婚姻状態にあったって事ですよね。ますます奥さんの心境がどういうものだったのか気になります。

ここは絶対に作品の中に入れるべきだったと思います。

 

とはいえ、メッセージ性という点においてこの作品に曇りがあるかというと全くそんな事はありません。

平野監督の真っ直ぐな愛情・ひたむきさ・優しさ・ひとりよがりの言動・自分勝手な恋愛感情・自己都合的な感情の起伏。

そして母と娘の掛け値なしの関係性。また、その関係を築くことが出来るまでの2人にとって遠く険しい道のり。

「愛」の綺麗な部分も汚い部分も、見たい部分も見たくない部分も、全て映し出されているから作品に説得力があるんですね。


この映画には、作り手が全力で投げかけてくるメッセージを観客は否応なく受け取らざるを得ないような凄みがあり、平野監督の心の荷物の一部を観客も背負わされてしまうような強烈な訴求力のある作品になっています。


人が生きるということ・死ぬということ・誰かを愛するという事・そしてそれを失うという事・・・僕らが生きるうえで必ず避けては通れない喜びや悲しみについて深く深く黙考させられる素晴らしい作品ですので、是非映画館に足を運んで目撃者になっていただきたいと思う次第でござんした。

おしまい。

2011年10月15日土曜日

吾妻光良&The Swinging Boppers

最近気になってるのは、吾妻光良&The Swinging Boppers。


なかなかゴキゲンでしょ?(笑)
演奏力は勿論ドウマなんだけど、歌詞も超口語で聴いてて楽しい。
適当に言いたい事を音楽に乗せて歌ってるような感じだけど、その歌詞以外ありえないって思えるもんね。
2:05~からのラップとかさ、超楽しいしさ。
「オレ達よ 齢だからよ 近頃特に頑固でよ」

楽しそうに演ってるミュージシャンってそれだけで惹かれるものがあるけど、彼はそのお手本みたいなさ。
ルックスも超スウィングしてるもんなあ!

この手のジャイヴバンド音楽って今まで全然ノーマークだったんだけど、HIFANAのアルバム「24H」の中の彼がギターで参加してる曲が琴線に触れて聴くようになった。


これもホントくだらないライブで素晴らしい(笑)

 

 

しばらくサボリ気味だった読書も最近復活してきた。そんな感じ。

ゴランノスポン
ゴランノスポン


新宿スペースインベーダー
新宿スペースインベーダー 昭和少年凸凹伝

2011年10月14日金曜日

Steve Jobs & PIXAR

さる2011年10月5日、アップル元CEOスティーブ・ジョブズが亡くなりました。

彼はアップルのCEOでありながら、映画製作会社ピクサーのCEOも務めていました。

ジョブズの死去に際し、アップル・ピクサーの両社とも自社サイトのトップページに追悼メッセージを掲載しました。

これがまた超対照的で興味深いんです。


こちらがアップルのトップページ。
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THE・偉人!って感じですね。
いかにもアップルらしい洗練されたデザインが印象的。


そしてこちらがピクサーのトップページ。
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左から、
エド・キャットムル(ディズニー・ピクサー社長)、スティーブ・ジョブズ(ピクサーCEO)、ジョン・ラセター(ピクサークリエイティブ部門のトップ)。
ピクサー設立者3人が仲良しこよししている微笑ましい写真です。映画館の座席でっていうのも泣かせる・・・。


こんなのもありました。

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ジョブズと同じ黒のタートルネックセーターに身を包んで彼を偲ぶピクサーのキャラクター達。
加齢と共に涙腺が馬鹿になってきてる俺には、こういうのがやけに泣ける・・・(;_;)


あと、かなりグッときたのがこの写真。

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ジョブズの訃報が報道された直後、カリフォルニア州エメリービルにあるピクサー社に大きな虹がかかったんです。
なにこのファンタジー。

 

 


もともとピクサー(当時はまだピクサーという名前も無かった)はルーカス・フィルムの中にあって、VFX効果用のCG製作ソフトを開発している一部門でした。しかしこれといった成果を挙げることが出来なかったうえに、金ばっかりかかって仕方ないってんで、ルーカスフィルムは自社のCG部門を手放すことになったのです。


そんな時、そのCG部門を買収したのがスティーブ・ジョブズでした。
たった1000万ドルで買収したそのCGチームを「ピクサー」と命名、CG製作ツールの開発を続けさせました。


そしてジョブズは、ピクサー社の開発したツールの性能を宣伝するために、ディズニー出身のクリエイターであるジョン・ラセターさん(現在はピクサー製作部門のトップ)に短編アニメーション作品を作らせます。
このアニメ作品を観たジョブズさんは「CGアニメ、結構イケるじゃん!」「CGで映画なんか作ってみたらオモロイはず!」という構想を抱くわけです。
それがピクサーがCGアニメ製作会社としてスタートするきっかけでした。

しかし、この頃のCG技術はまだまだショボくて表現力に乏しかったので、CGだけで映画をつくるなんて夢のまた夢でした。

しかも当時は「リトル・マーメイド」や「美女と野獣」などが大ヒットしていた所謂「第2期ディズニー黄金時代」で、もちろん手描きアニメーションが主流。コンピューターグラフィックで映画を作ると言っても誰も見向きもしない時代でした。


それからしばらくピクサーはCG製作ツールの技術開発に取り組みまくりつつも、少しも儲けを出すことはありませんでした。
それでもジョブズは万年赤字のピクサーにCM製作などのちっちゃな仕事を持ってきてあげたりして初期ピクサーを経済的に支えました。イイハナシダナー (;_;)


そしてついに、ピクサーが陽の目を見る日がやってきました。
1986年にピクサーが製作した短編「ルクソール Jr.」がその年のアカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされちゃったのです。
そして1988年には、短編「ティン・トイ」でついに同部門を受賞しちゃったのです!やったぜベイビー!


「アカデミー受賞」という強力な武器を手に入れたピクサー。

この武器を持って、ジョブズはついにディズニーと交渉します。
まあこの時ピクサーはディズニーアニメの下請け(着色など)をやっていたので多少つながりはあったものの、それでも映画製作の第一歩としていきなりディズニーに話を持っていくのが凄いです。
一体どんな勝算があったのか知りたいくらい無謀な話に思えますが、なんと交渉は成立。
めでたくピクサーはディズニーとの提携と配給契約を結ぶことに成功したのでした。


そしてそこからまた超ドラマチックな展開があり(話せば長いので男らしく省略します)、ディズニーはピクサーを買収。その後またゴニョゴニョして(長くなるので九州男児として省略します)、最終的には実質経営権をピクサーに全部託しちゃうまでになりましたとさ。めでたしめでたし。


その後のピクサーの活躍は皆さんご存知のとおり。
ジョブズパイセンはアップルCEOとしてコンピューター業界に偉大な功績を残したと同時に、ピクサーCEOとして映画史を前進させる偉業を果たしたどえりゃー男でもありました。


ジョブズは「なぜ映画の仕事をするのか?」ということについて、こう語ったそうです。

「映画の世界はゼロサムじゃないからね。コンピュータービジネスには勝者と敗者しかいないんだ。ウィンドウズを買った人は、もうマックは買わない。だけど、映画は違う。素晴らしい作品が何本もあれば、人々はそれを全部観る事だってあり得る。」

 

非常に素晴らしい発言ですね。
つまり、映画はどんな奴の感情をも揺さぶることが出来る、ってことでしょ。

さすが一流のクリエイターは何を語らせても一流です。。

 

 

ここで懺悔をひとつ。

かつての僕はアップルおよびアップル社の製品が嫌いでした。
理由は特にありません。なんとなく、です。

強いて言うなら、僕が卑屈な人間だったからです。

なんとなくオシャレだったのがいけ好かなかったのかもしれないし、なんとなくオシャレなアップル社製品に人が流れていくのが不快だったのかもしれません。

「macはwindowsと違ってウィルス感染の心配がない」と言いながら、windowsマシンがウィルス感染するよりmacが故障する頻度の方が高いのにも「何だそれ!」って思ってましたし、なにより「マイコンピュータとして不安定」という印象が非常に強かったです。マシンの安定性や使えるソフトの種類を考えたら、どう考えてもwindowsの方がイイだろ、とも思っていました。

特に音楽をやってる人だったりクリエイターだったりが使っているマックが「なんとなくマック」に見えて嫌でした。
マック使ってるほうがクリエイターっぽく見えるからマックなんだろ?と非常に卑屈なモノの考え方をしておりました。


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そのむかし、僕がアップルストアでインストアのライヴをやらせて頂いた時も、店内にwindowsマシンであるSONYのVAIOを持ち込んで演奏したほどであります。

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今となっては馬鹿だったとしか言いようがありませんが。

でもそれぐらい、アップルには抵抗を感じていました。

 

そんな僕も今やすっかりiPhone & iPod ユーザー。
今となっては、なんであんなにアップルが嫌いだったのか全く意味がわかりません。

これほどまでにユーザーをワクワクさせてくれる企業はそうそうありませんよね、まったく!

俺は最初から「アップルはやるときゃやる会社だ」って思ってた
んですよね~。アップル嫌いとかウソウソ!
今までちょっと不良ぶって反発してただけだから!

パソコンは相変わらずwindowsですが。。。

2011年10月12日水曜日

世界侵略:ロサンゼルス決戦

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世界侵略ロサンゼルス決戦 - オフィシャルサイト



「世界侵略:ロサンゼルス決戦」観てまいりました。
本日も爆発的ネタバレで感想をお届けいたします。


映画のストーリーをざっと説明しますと、
ある日突然、地球がエイリアンからの侵略を受けます。battle_los_angeles_pin-20_R  Battle-Los-Angeles-02
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世界の大都市が次々と陥落していく中、アメリカ海兵隊の皆さんが「ロサンゼルスは死守したるねん!」と勇猛果敢にエイリアンに立ち向かう、という非常に分かりやすいお話でございます。


なんでもエイリアンの目的は地球の「水」
エイリアンにとって水は貴重なエネルギー源らしく、地球を侵略・植民地化して海水をゴッソリ頂いちゃおうって寸法だそうです。

事前に電話とかメールで「ちょっとお水ちょうだい♪」って言ってくれれば、少しくらいあげたのにねぇ!

 

資源を奪うために戦争をしかけるってなんか聞いたことありますねぇ。
あ!それこないだアメリカがイラクにやってたやつじゃん!

 

閑話休題。。。

 

まずは「世界侵略:ロサンゼルス決戦」の特徴から。

『インディペンデンス・デイ』『ブラックホーク・ダウン』を足したような世界観ですね。
エイリアン侵略モノを戦争映画のタッチで描いたという感じ。
きっとそこがこの映画のウリでもあるんでしょう。

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「戦争映画のタッチ」という面で特筆すべきはやはり撮影方法でしょう。

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終始、手持ちカメラで撮影されています。

劇中で戦争が起こっている現場のさなか・活躍している兵士達に近い場所でカメラを構えて撮るという事で、観客が兵士達と共に行動しているような効果を出しています。
映像の臨場感という点ではかなり成功しているんじゃないでしょうか。

『どうです?手持ちカメラだと迫力あるでしょ~?』的なあざとさを感じる部分も若干あったけど。

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手持ちカメラで臨場感があるのは良い事なんですが、戦闘シーンのような派手な動きのある場面になると、とにかく見づらい。
誰がどこにいて何をしているのかが一見して分かりにくいんですよ。
ただでさえ海兵隊の皆さんは同じ軍服姿で区別がつきにくいというのに・・・。
もう少しカット割りやアングルを整理して見せて欲しかったです。
誰がどこにいるのかも分からないというのはアクションシーンとして致命的だと思うのですが・・・。


主人公は海兵隊のマイケル・ナンツ二等軍曹(アーロン・エッカート)。
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「気持ちはまだまだ若いもんには負けんが、体力の衰えには逆らえない」と、自らの老いを痛感する毎日。

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ナンツ二等軍曹がゼエゼエ肩で息をしながらランニングしている横を、颯爽と追い抜いていく若い軍人たち。
そんな「軍隊モノの映画で1万回は観たことあるようなシーン」もしっかりあります!

そんな彼にはある暗い過去がありました。
それは、かつて自分の指揮下で部下である兵士を戦死させてしまったツライ経験があるということ。ナンツは常にこの重い責任と罪悪感を感じながら生きているのです。

みなさんどうですか!
この「老いを感じ始めたオッサン+触れられたくない暗い過去」っていう、まさに 俺達が同情したい負け犬設定!

 

そして今回の戦いに参加する兵士達が次々に紹介されます。
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「17歳の童貞青年」だの「このミッションから帰還したら結婚するんだ~」だの「故郷には妊娠した妻がおります」だの「自宅の妻に手紙を書いて・・・」だの「ナンツ軍曹軍曹の指揮下で戦死したのは俺の兄」だの・・・

兵士達それぞれのバックボーンおよび死亡フラグがダイジェストで極めて事務的描かれる訳です。

確かに分かりやすいしスマートだし、短時間で描写できてるけどさ・・・。
ここまでダイジェストでお届けされると、物語っていうより単なる事前情報にしか見えないっていうか。。。


そして任務の遂行へと移ります。
ここからは冒頭でおったてられた死亡フラグを粛々と回収する展開でございます。
我々観客は誰が死んで誰が生き残るのかをひたすら見守る任務に就くこととなります。

負傷しつつもヘリで救出されホッとひと安心した矢先に死ぬ者あり、「妻にこの手紙を渡してくれ・・・」と言い残して自己犠牲的に死んでいく者あり、任務遂行のため自ら危険な場所へ向かっていって死ぬ者あり・・・

とにかくもう色んな戦争物の映画やドラマで10万回は見たことあるような死に様が満載!
アメリカ海兵隊のみなさん、こういうのを日本語で「WAZATORASHII」とイイマ~ス!

 

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兵士達に救助され、彼らと行動を共にしていた民間人の親子も例外なく戦禍を被ります。
兵士達に協力しようと銃を手にとって戦おうとした父親が案の定返り討ちに遭い、「息子を頼む・・・」と言い残して死んでいくという、これまたベタに泣かせる展開
残された息子はお父さんが大好きだったもんだから大ショック。

しかしナンツ2等軍曹がソツなく励まします。
ここから息子が父親の死をどう乗り越えていくのか!?
・・・と思いきや、これ以降親子の話は出てきません!!
ほったらかしかい!


なかでも印象に残ったのは、ナンツ軍曹に対する部下の不満が爆発するシーン。
かつてナンツ2等軍曹の指揮下で兄を亡くした兵士が「軍曹は口を開けば民間人を守れってウルサイけどさー、俺達部下の命はどうだっていいと思ってんでしょ!?だから俺の兄貴も死んだんじゃん!?」と反発します。
するとナンツ軍曹が「私は戦場で命を落とした部下のことを1日たりとも忘れたことはない!」と突如として感情を露にします。
しかも、死んだ部下たちのフルネームと認識番号(恐ろしいほどの桁数)を完璧に記憶しているんですね。

あきらかにやりすぎな演出なんですが、物語も佳境に入っていることもあり、我々観客はナンツ軍曹が部下を見捨てるような冷たい男ではないことくらい知っている&彼への感情移入MAXなため、「どうだ、ナンツ軍曹はこんなに部下思いのいい上官なんだぞ!お前ら部下より俺達のほうが知ってるもんね~!」と若干の爽快感も覚えてしまうという、不思議な感動がありました。

 

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一番の不満点は、肝心のエイリアンがつまんないんですよ。
容姿もつまんないし、戦い方も普通。
得体が知れない割に予想を超えてくれないんですよね。
もう少し独特の兵器とか戦い方で予想外の攻撃をしかけてきてくれれば見所も増えたんじゃないかと思います。

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この手の戦闘機は全然想像の範囲内じゃないですか。

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でもこの兵器はちょっと面白かったかな。

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『マイティ・ソー』のコイツみたいな兵器でした。



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ラストはエイリアン側の司令塔に誘導ミサイルを打ち込んで、見事エイリアン軍の本丸を破壊。

もの凄い勢いと科学力で侵略してきた割には
ミサイル2~3発で終了ってずいぶん弱いな~っていう気もしましたが、『地球が救われるに越したことはないんだから!』と自分に言い聞かせてアメリカ海兵隊の大健闘に拍手を送りました。

やー、めでたしめでたし。

・・・と思いきや「ここから敵を追い込んで一掃したるで~!」と食事する暇をも惜しんで再び戦場へ向かうという「ブラックホークダウンそのまんまやんけ!」と突っ込まずにはいられないエンディングもどうかと思いましたが・・・。

っていうか部下思いを自称するんなら飯ぐらい食わせてやれよ!

 

battle_los_angeles_movie_trailer個人的にはミシェルロドリゲス姐御の活躍をもうちょっと拝みたかったです。
俺が監督なら無理矢理シャワーシーンとか入れるけどね!
「腹が減っては戦は・・・」つってエイリアンの死肉をムシャムシャいっちゃうぐらいの事はあってもよかったんじゃないですか!