2013年1月28日月曜日

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この映画のお噂はかねがね聞いておったのですが、それよりなにより最初に飛び込んできたこの北米版予告編に胸を打たれまして。

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特に「♪FUCK YOU Thunder!you can suck my dick!(ファック・ユー雷 チンポしゃぶれ)」のくだりに心打たれますよね。

 

物語は主人公ジョンの幼少期からスタートします。

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ジョン少年。友達がただの1人もおりません。かといって、いじめられっこではないんです。もはやいじめられもしません。
それどころか、ボコられている最中のいじめられっこからも「死ね」と端的極まりない罵倒を浴びせられるという、街の子供内カースト最下層の少年であります。

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そんなジョン君、両親からクリスマスプレゼントにクマのぬいぐるみを貰って大喜び。
友達のいない彼は「テッドと話が出来たら良いのにな・・・。」と星に願いをかけます。

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するとなんということでしょう!!
翌朝、テッドは命を吹き込まれて「僕達は親友だよ~♡」なんて言いながらハグしてくれるではあーりませんか。

・・・その後舞台は一気に27年後。すっかりオッサンと化したジョンとテッドは、いまだ一緒につるんではダラダラ中学生レベルあるいはそれ以下の言動を繰り返しているのでした。
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ジョンの恋人・ロリーは、「そろそろジョンと結婚したいわ~」なんて思っているものの、いい歳こいてもガキみたいにつるんでいる1名と1頭にイライラ。「アタシとテッド、どっちが大事なの!?あんたがハッキリしてくれないんだったら別れちゃうんだからねっ!」とプンスカ状態。果たしてジョンはテッドとの共依存から脱して大人になれるのか?・・・というおはなし。

子供のおもちゃであるテディベアと離れる=子供を卒業して大人になる、ってことを暗示しているんですね。
恋人に家を追い出されて宿無しになったジョンがモーテルで『タンタンの冒険』を読んでいるのも、子供時代を引きずって大人になりきれない彼の幼児性を表現しています。

ジョンが8歳でテッドと出会い、35歳になるまでの27年の軌跡をフラッシュバックでテンポよく見せるオープニングが物凄くチャーミング。
この数分でジョンとテッドの厚い友情を描ききって、観客に一気に感情移入させるテクニックは流石。
特に『スターウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』を観るためにジョンがダースモール、テッドがヨーダのコスプレをしてウキウキで映画館に並んでいるシーンには「きっと観終わったあと超ガッカリしたんだろうなあ・・・。」と同情の涙を禁じえませんでしたよ。

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ぬいぐるみのテッドの毛並みが経年変化でボロくなってるのも芸が細かい。

 

キャラクターコメディにバディ・ムービー(相棒モノ映画)とブロマンス・ムービー(男同士の友情モノ映画)のエッセンスをふんだんに足したような感じでした。

 

一番に目に付くのはやはりキャラクターコメディとしての見た目のフレッシュさ。
こういう最先端のCG技術を使ったキャラクターコメディって、実は今まであまり無かったと思うんです。
こうしたCG技術は、大抵の場合「エイリアンが地球を侵略しにやってきて割とアッサリ返り討ちに遭う映画」あるいは「おっかねぇ動物や怪獣が丹念に街を破壊していく映画」に使われるばかりで、コメディー映画に最新のCG技術が取り入れられたって前例はかなり少ないですよね。

CGモーションを取り入れたキャラクターコメディ映画といえば、最近では「宇宙人ポール」がありましたが、「宇宙人ポール」の場合は制作費の都合上あまりCGキャラクターが動かせないという制約もあって、「ted」のようにキャラクターが暴れまわったりしません。宇宙人ポールの場合、動きよりはむしろ表情を中心とした見せ方だったんですよね。


「ted」は、ここまでCGキャラが自由自在に動き回る実写コメディは初めて観たぞェ!って感じで、なかなか新鮮でしたよ。

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テッドの声&モーションはセス・マクファーレン監督自ら担当しています。

こちらは「ted」のメイキング動画。なかなか見ごたえがあって面白いですよ。
役者の演技を撮影してる裏で、同時に監督が台詞とモーションを録ってるんですね。



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マーク・ウォールバーグとミラ・クニスのコメディ演技が実に素晴らしいという事も挙げておきたい!
ちょっと間延び気味の台詞の間やタイミングが絶妙。

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テッドの相棒・ジョン(マーク・ウォールバーグ)。マットデイモンから田舎っぽさを抜いたような、でもモッサリ感はそのまま、みたいな良い感じですね。彼は「アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!」でも間の抜けたボンクラ刑事ぶりが素晴らしかったので、今回のこの役もナイスキャスティングだと思います。

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ジョンの恋人・ロリー(ミラ・クニス)。彼女は今作の監督セス・マクファーレンが製作・監督・脚本・声の出演まで務めるTVアニメ「ファミリーガイズ」で13年も声優をやってるので、監督との意思疎通はバッチリだった模様。

 

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自立するためにスーパーマーケットに就職するテッド氏。割とすぐ馴染みますが、割とすぐ無茶します。
「おぬし良い目をしておる!」「その態度気に入った!」といった不思議な方式で出世していくサラリーマン金太郎をも超越した、謎の価値観に基づくサクセスストーリーでもって出世街道をひた走ります。

 

 

満面の笑みで「めんどくせー映画だなおい!」と叫びたくなるくらいに色んなボンクラネタがてんこ盛りなのも特徴です。
少年時代のジョンの部屋に「インディ・ジョーンズ」のポスターが貼ってあったかと思えば、大人になったジョンの部屋には「ジュラシック・パーク」のポスターが貼ってあって、いかに彼がボンクラのまま何の成長もなく大人になったかを表現しています。ジョンの携帯の着信音が「ナイトライダーのテーマ」なのが、もはや同情すら誘うボンクラぶりを際立たせます。

他にも「E.T」「スターウォーズ」「ブリジット・ジョーンズの日記」「007オクトパシー」「スーパーマン・リターンズ」etc・・・映画~TV~音楽~スポーツ~芸能・・・多岐に渡るネタが何のさりげなさもなく登場します。
ノラ・ジョーンズ(昔テッドのヤリ友だった設定)や、「グリーン・ランタン」でお馴染みのヴァン・ワイルダー(ジョンの同僚♂のゲイの彼氏役)による、やたら主張の強いカメオ出演も見所です。
アメリカ人でないと分かりづらいネタも実は多いんですが、映画評論家・町山智浩氏監修の字幕が非常に親切設計で元ネタを知らない常識人のお兄さんお姉さんでも楽しめます。

ちなみにどうでもいい補足説明をしておきますと・・・
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テッドがパーティー中に披露するナイフを使った曲芸は、「エイリアン2」に登場するビショップというキャラの得技なんです。
これがクライマックスシーンで可哀相な事になったテッドの台詞「エイリアン2のビショップみたいだろ?」と呼応してるんですねー。





色んなネタが満載の中、とにかく印象的なのは、ジョンとテッドが幼少の頃から大ファンだったという設定の「フラッシュ・ゴードン」ネタ


「フラッシュゴードン」を軽く説明しますと、アメフトのスター選手であるフラッシュ・ゴードンさんが、宇宙征服を目論む悪の皇帝ミンをやっつけるために宇宙を駆けずり回るぞ~!お~!っていうお話。
つーか、話の中にフラッシュ・ゴードンが出て来すぎだろ(笑)。
だってもう、映画として話のバランスがぶっ壊れるギリギリってくらい、異様な頻度でフラッシュ・ゴードンが出てくるし、途中なんかもうフラッシュ・ゴードンの話しかしてないんですよ。

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「フラッシュ・ゴードン」でフラッシュ・ゴードンを演じていたサム・ジョーンズ本人が出ます。


とまあ、最初から最後までオモロかったんですが、ちょっと難点を挙げると、クライマックスでテッドを襲う悲劇の後、テッドが復活するまでがアッサリしすぎですよね。そこにもうひと工夫欲しかったというか。
ジョンがテッド無しで自立した生活を送れるように何らかの努力をして成長するなり、なんかもうすこしジョンとロリーの成長があってから復活して欲しかったというか。テッドを疎ましく思っていたジョンの恋人ロリーがテッドの存在を認めて星に祈った、って事なんでしょうけど、正直、復活が早すぎる感は否めないですよね。
まあ、「テッドが復活してまたどうせ2人でダラダラすんだろ?」って爽やかな諦観が漂うエンディングも悪くなかったんですが。

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ラストのこの表情もすごく良かったしね。ラストで一番良い笑顔するんですよね~。ズルイよね~!

エンディングといえば、ラストの後日談のテキトーさには胸を打たれましたね。これまでのストーリーと全く関係ないアイドル俳優の写真で映画が終わるっていう、『映画作ってる途中で飽きてどうでもよくなってきたんじゃないか?』ってくらいのヤケクソっぷりで好感しか持てませんでした。

2013年1月21日月曜日

フラッシュバックメモリーズ3D

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セキ☆ララ」「あんにょん由美香」「童貞。をプロデュース」「ライブテープ」など、やたらとヘンなドキュメンタリー映画を撮る兄ちゃん、松江哲明監督の最新作はなんと3D!

マジかよ!なんだよソレ!という事で、Tジョイ博多で観てまいりました。

ディジュリデゥ奏者のGOMA氏は、2009年、首都高速で不慮の追突事故に遭遇。軽度外傷性脳損傷による高次脳機能障害を負い、過去の記憶が消えたり、新しい出来事を覚え辛くなってしまいます。
そんな彼がリハビリ期間を経てだんだんと復活していく様子を、アノ手コノ手で振り返りながら、突然何の脈略の無い映像が頭の中に浮かんでくる症状「フラッシュバック」を3D映像で表現しています。

・・・と言葉で説明しても何のこっちゃ分からないどころか、「脳がおかしいのはお前の方だ」って感じでしょうから、これは皆さんに映画館で確認していただくしかないんですが。


まず最初に言っておきたいこと。
これは映画館で3Dかつ大音量で観なきゃ何の意味もない!!!という事です。


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ライブ映像と3D効果の相性の良さがちょっとどうかと思うくらいの素晴らしさで驚きました。え、こんなに立体感あるの?ってビックリですよ。ホントにライブを観ているような感覚に陥りました。
キミ格好うぃーね!ゲッツ!(流行語)

難点は、超カッコイイバッキバキのビートが大音量でずーーーーっと鳴ってるのに、映画館では踊れないところ・・・。

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ディジュリドゥって楽器がまた凄く3D向きの形状なんだなこれが!そんなに飛び出す必要ないだろってくらい飛び出しておられました。思わずディジュリドゥに敬語を使ってしまいました。

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基本的には、現在のGOMA氏のライブ演奏の背後に、事故以前の過去の映像が淡々と映され続けるという流れ。もちろん3D映画なので、過去の映像はGOMA氏のライブ映像よりも一層後ろで流れるんですね。

この、【過去の記憶をレイヤーとして捉える】という解釈がとても面白いんです。

現在のGOMA氏の背景として過去の映像が流れるだけの本当にシンプルな構成なんですが、この3D演出ひとつで、どんどん想像が膨らんで色んな解釈が出来るんです。
現在の背後に過去があり、過去の手前に現在がある。
この映像だけで、「過去の積み重ねがあるから現在がある」とも取れるし、「現在が過去を塗り替えていく」ともとれるし、「過去を背にしてひたすら前進していく」ようにも見えますよね。

つまり、想像の余地が沢山あるのが、この映画の良い所だと思うんです。

だって、どうやったってGOMA氏の感覚は本人にしかわからないんですよ。この映画を観ている僕たちも、GOMA氏がどんな感覚で日々を過ごしているのか想像もつかないし、「さぞかし不安なんだろうな」と漠然とした想像しかできない。
分からない事は分からない事として、分からないなりに表現しているように見えました。

 

中盤以降になると、いよいよ事故と高次脳機能障害の話になってきます。

fbm_sub1-s_large映画『フラッシュバックメモリーズ 3D』予告編.mp4_000054521
事故の様子を説明するくだりになると、映像が突然手描きアニメーションになるのが凄く印象的でした。
3D映画だからこそ出来る疑似体験的な手法だし、言葉で説明されるよりも観客に伝わるし、非常に気が利いてますね。


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GOMA氏の事故以降の映像も入るようになり、GOMA氏と奥さんによる日記から引用された肉筆の文章、GOMA氏がある日突然描き始めた絵などが背景として登場するようになります。
事故前は絵なんて全く描かなかったのに、急に「絵を描きたい」と言い出して「自分は画家だ」と思っていた話とか、予定されていたリキッドルームでのライブの話を振られて「リキッドって何?」って答えた話には衝撃を受けました。

事故の様子とか記憶が失われていく様子とかネガティブな話も勿論出てくるんですけど、そんなに悲惨な描写がなされる訳でもなく、ダークさは比較的薄いんですよ。どちらかと言えば、記憶を失う悲しみや苦痛という面よりも、むしろGOMA氏の「これから前向きに生きていくんだ!」という強さやポジティブさにフォーカスしているように見えました。
復帰ライブに向けての最初のリハが上手くいって泣き崩れるエピソードや、リハーサル毎に体が感覚を取り戻していく話もスゲー良い話だな~って。


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GOMA氏の奥さんや子供が出てくる家族のシーンでは、鉄の男」と呼ばれたこの私も(;_;)でした。
奥さんがさぞかし優しくて立派な方なんだろうなあ、と、彼女の日記の文章から伝わってきますわなー。


GOMA氏の言う「過去」「今」「未来」という言葉は、僕らが普段使っているそれとは全く違う意味に聞こえるんですよね。もっと言えばGOMA氏の「今日」という言葉でさえ、普段僕らが使っている言葉とは違う重みを感じます。

やってる事は凄くトリッキー、でもシンプルな構成。それだけにガツンと心に飛び込んできます。
ディジュリドゥによる重低音のシャワー&3D映像のシャワー。
「見せる」というよりも「感じさせる」まさに体感型のドキュメンタリー映画でした。

2013年1月17日木曜日

「桐島、部活やめるってよ」を尋ねて。

IMG_4503先日発表させていただきました俺の2012年・映画ランキングにおきまして第1位の栄冠を勝ちとられました「桐島、部活やめるってよ」が、日田リベルテで上映されておりましたので、この栄光を祝しまして表敬訪問させて頂かねばなるまい!ねばねばなるまい!と2回意気込んで行って参りました。
ちなみに僕が『桐島~』を観るのはこれが3回目です。

IMG_5775 (1)お店の中に入るとこんな感じで雑貨屋さんテイスト。可愛い雑貨やCD、濃厚な書籍がズラリ。良い感じのお店でしょ?この奥に60席ほどの小さな劇場があって「なんか学校の視聴覚室みたい!」って思ってたら、上映開始の合図が「キーンコーンカーンコーン・・・」って学校のチャイム音でビックリしました。可愛いから許す!

日田リベルテで感動したのは、映画館の座席に折りたたみ式のテーブルが付いてて、映画が始まる直前に、自分が座ってる席まで飲み物を持ってきてくれる事。ホットカフェオレ頼んだら可愛いマグカップで来たのも嬉しかった。

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ひじかけからテーブルにトランスフォーム!

o0300042412157610989で。せっかくなんで桐島の感想を。

映画「桐島、部活やめるってよ」公式サイト

最初は原作未読の状態で観に行ったんですけど、映画を観て、これはちょっと事件だと思いまして、急いで本屋さんに駆け込んで文庫を買いました。それくらい良い!この映画に登場する全ての高校生達が「それでもこの世界で生きていかなければならない」ゆえに青春を爆発させていましたよ。眩しくてたまらんかった!

始めに結論から言いますけど、この映画は本当に日本映画史に残ると断言できます。特に学園モノというジャンルにおいては、桐島前・桐島後」というふうに、必ず比較対象として引き合いに出されるでしょう。

キャスティングが全員かなり素晴らしく、演技は勿論なんですが、特筆すべきは、
余計な演出しなくても、その登場人物がどんな奴なのかは顔が物語ってるという。

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主人公である映画部の前田くん。かわいらしくて愛すべきボンクラでした。モテなさそうだけど見てて気持ち悪いほどじゃない、みたいなバランスが絶妙ですね。どこが悪い訳でもないんだけど極端にセックスアピールが無いんですよね。

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映画部の同級生・武文(前野朋哉)とのやりとりがいちいち最高です。

じつは武文役の前野朋哉くんは、俳優としての活動しつつ映画監督でもあって、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭のオフシアター・コンペティション部門で審査員特別賞とシネガーアワードを受賞してたり、あのジョニー・トーからも将来を有望視されるほどの手腕の持ち主なんですよ。

彼の監督作品の予告編を貼っておきます。




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バトミントン部のかすみちゃん(橋本愛)。

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「あれ?もしかして俺たち結構趣味合う?」と思ったのも束の間、実際そうでもねえ時のあの息苦しさが見事に描かれていて悶絶しました。

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沙奈(松岡茉優)。クラスの同調圧力における悪の枢軸のごとき女子。俺達がムカつきたい女子とでも申しましょうか、女の腐ったような女をじっくり熟成させてさらに腐らせたような女で、よくある「女の子同士のメンドくさいアレ」を類稀なる演技力で見せてくれます。演技が自然すぎて「この子、ホントにこういう奴なんじゃないのか?」と思えるほど松岡茉優ちゃんにとっては全く得しない役どころではあるんですが、見事に演じきっていましたね。

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学校一のカワイコちゃん・梨沙(山本美月)。美人すぎてもはやSF。過剰なタテ巻きがいかにも女子高生のやりそうな髪型です。毎日巻いてるうちにだんだん加減が分からなくなってきちゃって、今この状態、みたいな。

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吹奏楽部・部長の沢島さん(大後寿々花)。この子の宏樹に対する片想いっぷりに共感する女子が多発している模様。

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宏樹が何気なくている窓の外を見つめる沢島さん。こんな1カットで乙女の切ない恋心を表現できるスマートさ!この1カットだけで、彼女が「宏樹クン、今何考えてるのかな?」って想いを巡らせてるのが分かりますもんね。

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帰宅部・竜汰(落合モトキ)。俺が高校生の頃なら「は~い!死ねばいいと思いま~す☆」って思ってたであろうキャラ。特にミサンガのシーンは本当に臍を噛み切る思いで殺意を隠せませんでした。
ただ、こういうタイプの調子ぶっこいてる奴にかぎって、世渡り上手というか、挫折しないでスルスル~と人生うまく行くんだよなあ。

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帰宅部・友弘(浅香航大)。映画の中で何回もバスケして何回もシュートを打つんですが、なにげに1本も入ってないという。普通1回くらいはまぐれで入るだろ、と言いたくなるほどバスケの神様の降りてこなさには好感が持てます。

男子の制服の着こなしでキャラの描き分けしてるのが上手いんですよ。クラスのイケてる派(運動部系)はネクタイも緩めで着崩してて、イケてない派(文化部)はピシっと真面目に着てる。チャラい派(帰宅部)はシャツの上にパーカーとかニットとか着てる。


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バレー部の久保(鈴木伸之)。オレ、こいつとは絶対友達になれねー!

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バレー部・風助(太賀)。桐島が部活を辞めた穴埋め要員として急遽レギュラー入りするんですが、やはりスーパースター桐島の代打としては実力不足で、周りからは責められるし本人も重々分かってるんだけど体が追いつかないんですね。そしてどんどん自分で自分を追い込んでしまうという切ない男。
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「何とかしようとしてこの程度なんだよ俺は!!」って久保に掴みかかる、このシーンがホント泣ける。

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それを見ているバドミントン部・実果(清水くるみ)。彼女の亡くなった姉がバドミントンの実力者で、姉のようになりたくてバドミントンやってるんだけどなかなか追いつけないというコンプレックスがあるんです。だから彼女は、風助の「なりたい自分と現実の自分とのギャップ」に悩む気持ちが痛いほど分かるんですよね。それを言葉にしないで表現できてるのも素晴らしい。一刻も早く風助と付き合ってください!

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野球部のキャプテン。ブレなさ、という点ではこの映画の中で最強のキャラでしょう。彼の名台詞「ドラフトが終わるまでは・・・」は一生忘れません。

幽霊野球部員・菊池宏樹を演じる東出昌大くんが本当に素晴らしい。

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「だから結局ぅ、出来るやつは何でも出来るし、出来ないやつは何にも出来ないってだけの話だろ。」と、神と思しき勝ち組視点からの物言い。

そう言い放ってからの~

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振り向きざま、シュート!!

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なに成功してんだよ!

とまあ、こういったシーンからも分かるとおり、宏樹はいわゆる持ってる側の人間な訳です。勉強出来る、スポーツ出来る、ルックス最高、女にはモテる・・・出来杉出来蔵くんなんですね。要するに「生まれつき持ってる奴」なんです。前述の「出来るやつは何でも出来るし、出来ないやつは何にも出来ないってだけの話だろ。」って台詞も、出来過ぎちゃうからこその調子コキ発言でもあるわけ。
ところが、話が進むにつれ、宏樹はある事に気付いてしまうんです。
「あれ?俺、夢中になれる事が何にも無い・・・」と。

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終盤の、宏樹がサボり続けた部活を再開しようと決意した瞬間に居場所がなくなるシーン→その後の屋上でのやりとりや表情など、切ないやらカッコイイやら美しいやらで、思わず込み上げるものがございました。こいつ良い役者になるぜ。


とまあ、ここでは書ききれないほど良いシーンの連続なんですが、ホント事件ってくらい感動したのは、やはりクライマックス。
夕方の屋上で前田君が「みんな喰い殺せ!」って指令を出して、ゾンビa.k.a映画部員どもがイケてる生徒軍に襲い掛かるシーン。o0450029912206743321
普段は温厚な前田君が「調子こいてる奴らマジぶっ殺す!」と、不条理なスクールカーストへの怒りが爆発する!
彼にとってゾンビ映画がまさに「半径1メートルのリアル」だった事が証明された瞬間ですよ。

しかもこのシーンでかかるBGMは失恋してふっきれた沢島さんが演奏するワーグナーの曲。
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好きな事に一生懸命打ち込んでいる子達がついに何かを掴み取る瞬間ですよ!しかもこの屋上シーン、原作にはないくだりなんですよ。この作品の肝の部分をガッチリ捉えた本当に素晴らしいシーンだと思います。ものすごく脚本が良いんですよね。

以前KBCシネマで「桐島~」観たとき、このシーンで他のお客さん達は皆笑ってたんですよ。でも俺はそのシーンで超泣いてて「そこ笑うとこじゃねえよ!なんで笑うんだよぉ~!」って思ってたんだけど、ふと隣を見たらスーツ姿の中年オジサンが俺よりも大号泣してたのが素敵な映画想ひ出です。

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ゾンビ部 映画部のみなさんお疲れ様でした。


『桐島、部活やめるってよ』でズキューン!ときた人だけで少年自然の家みたいなトコに合宿してもいいくらい良い映画なんだよ。

この映画は序盤で学校内格差や同調圧力、そしてそれにまつわる人間関係を描きながら、桐島という不思議な存在を通して、だんだんと「全てを持ってるけど大切な何かを持ってない奴」「何も持ってないけど大切なものはちゃんと持ってる奴」の話に帰結していくんです。

好きなものを好きでいつづける事の素晴らしさが非常に美しい形で描かれていて感動的。
ラストの「戦おう。それでもこの世界で生きていかなければならないのだから。」って台詞が猛烈に心にしみます。
つまり、これは学校の中だけの話ではないんです。人間の集まっている場所ならどこにでもある、この世界全体に通じている話なんですね。

こんだけ良いと言い続けてるのに、それでも観ないやつは馬鹿としか言いようが無い!
そう言いきれるほどの傑作です。