この映画のお噂はかねがね聞いておったのですが、それよりなにより最初に飛び込んできたこの北米版予告編に胸を打たれまして。
特に「♪FUCK YOU Thunder!you can suck my dick!(ファック・ユー雷 チンポしゃぶれ)」のくだりに心打たれますよね。
物語は主人公ジョンの幼少期からスタートします。
ジョン少年。友達がただの1人もおりません。かといって、いじめられっこではないんです。もはやいじめられもしません。
それどころか、ボコられている最中のいじめられっこからも「死ね」と端的極まりない罵倒を浴びせられるという、街の子供内カースト最下層の少年であります。
そんなジョン君、両親からクリスマスプレゼントにクマのぬいぐるみを貰って大喜び。
友達のいない彼は「テッドと話が出来たら良いのにな・・・。」と星に願いをかけます。
するとなんということでしょう!!
翌朝、テッドは命を吹き込まれて「僕達は親友だよ~♡」なんて言いながらハグしてくれるではあーりませんか。
・・・その後舞台は一気に27年後。すっかりオッサンと化したジョンとテッドは、いまだ一緒につるんではダラダラ中学生レベルあるいはそれ以下の言動を繰り返しているのでした。
ジョンの恋人・ロリーは、「そろそろジョンと結婚したいわ~」なんて思っているものの、いい歳こいてもガキみたいにつるんでいる1名と1頭にイライラ。「アタシとテッド、どっちが大事なの!?あんたがハッキリしてくれないんだったら別れちゃうんだからねっ!」とプンスカ状態。果たしてジョンはテッドとの共依存から脱して大人になれるのか?・・・というおはなし。
子供のおもちゃであるテディベアと離れる=子供を卒業して大人になる、ってことを暗示しているんですね。
恋人に家を追い出されて宿無しになったジョンがモーテルで『タンタンの冒険』を読んでいるのも、子供時代を引きずって大人になりきれない彼の幼児性を表現しています。
ジョンが8歳でテッドと出会い、35歳になるまでの27年の軌跡をフラッシュバックでテンポよく見せるオープニングが物凄くチャーミング。
この数分でジョンとテッドの厚い友情を描ききって、観客に一気に感情移入させるテクニックは流石。
特に『スターウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』を観るためにジョンがダースモール、テッドがヨーダのコスプレをしてウキウキで映画館に並んでいるシーンには「きっと観終わったあと超ガッカリしたんだろうなあ・・・。」と同情の涙を禁じえませんでしたよ。
ぬいぐるみのテッドの毛並みが経年変化でボロくなってるのも芸が細かい。
キャラクターコメディにバディ・ムービー(相棒モノ映画)とブロマンス・ムービー(男同士の友情モノ映画)のエッセンスをふんだんに足したような感じでした。
一番に目に付くのはやはりキャラクターコメディとしての見た目のフレッシュさ。
こういう最先端のCG技術を使ったキャラクターコメディって、実は今まであまり無かったと思うんです。
こうしたCG技術は、大抵の場合、「エイリアンが地球を侵略しにやってきて割とアッサリ返り討ちに遭う映画」あるいは「おっかねぇ動物や怪獣が丹念に街を破壊していく映画」に使われるばかりで、コメディー映画に最新のCG技術が取り入れられたって前例はかなり少ないですよね。
CGモーションを取り入れたキャラクターコメディ映画といえば、最近では「宇宙人ポール」がありましたが、「宇宙人ポール」の場合は制作費の都合上あまりCGキャラクターが動かせないという制約もあって、「ted」のようにキャラクターが暴れまわったりしません。宇宙人ポールの場合、動きよりはむしろ表情を中心とした見せ方だったんですよね。
「ted」は、ここまでCGキャラが自由自在に動き回る実写コメディは初めて観たぞェ!って感じで、なかなか新鮮でしたよ。
テッドの声&モーションはセス・マクファーレン監督自ら担当しています。
こちらは「ted」のメイキング動画。なかなか見ごたえがあって面白いですよ。
役者の演技を撮影してる裏で、同時に監督が台詞とモーションを録ってるんですね。
マーク・ウォールバーグとミラ・クニスのコメディ演技が実に素晴らしいという事も挙げておきたい!
ちょっと間延び気味の台詞の間やタイミングが絶妙。
テッドの相棒・ジョン(マーク・ウォールバーグ)。マットデイモンから田舎っぽさを抜いたような、でもモッサリ感はそのまま、みたいな良い感じですね。彼は「アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!」でも間の抜けたボンクラ刑事ぶりが素晴らしかったので、今回のこの役もナイスキャスティングだと思います。
ジョンの恋人・ロリー(ミラ・クニス)。彼女は今作の監督セス・マクファーレンが製作・監督・脚本・声の出演まで務めるTVアニメ「ファミリーガイズ」で13年も声優をやってるので、監督との意思疎通はバッチリだった模様。
自立するためにスーパーマーケットに就職するテッド氏。割とすぐ馴染みますが、割とすぐ無茶します。
「おぬし良い目をしておる!」「その態度気に入った!」といった不思議な方式で出世していくサラリーマン金太郎をも超越した、謎の価値観に基づくサクセスストーリーでもって出世街道をひた走ります。
満面の笑みで「めんどくせー映画だなおい!」と叫びたくなるくらいに色んなボンクラネタがてんこ盛りなのも特徴です。
少年時代のジョンの部屋に「インディ・ジョーンズ」のポスターが貼ってあったかと思えば、大人になったジョンの部屋には「ジュラシック・パーク」のポスターが貼ってあって、いかに彼がボンクラのまま何の成長もなく大人になったかを表現しています。ジョンの携帯の着信音が「ナイトライダーのテーマ」なのが、もはや同情すら誘うボンクラぶりを際立たせます。
他にも「E.T」「スターウォーズ」「ブリジット・ジョーンズの日記」「007オクトパシー」「スーパーマン・リターンズ」etc・・・映画~TV~音楽~スポーツ~芸能・・・多岐に渡るネタが何のさりげなさもなく登場します。
ノラ・ジョーンズ(昔テッドのヤリ友だった設定)や、「グリーン・ランタン」でお馴染みのヴァン・ワイルダー(ジョンの同僚♂のゲイの彼氏役)による、やたら主張の強いカメオ出演も見所です。
アメリカ人でないと分かりづらいネタも実は多いんですが、映画評論家・町山智浩氏監修の字幕が非常に親切設計で元ネタを知らない常識人のお兄さんお姉さんでも楽しめます。
ちなみにどうでもいい補足説明をしておきますと・・・
テッドがパーティー中に披露するナイフを使った曲芸は、「エイリアン2」に登場するビショップというキャラの得技なんです。
これがクライマックスシーンで可哀相な事になったテッドの台詞「エイリアン2のビショップみたいだろ?」と呼応してるんですねー。
色んなネタが満載の中、とにかく印象的なのは、ジョンとテッドが幼少の頃から大ファンだったという設定の「フラッシュ・ゴードン」ネタ。
「フラッシュゴードン」を軽く説明しますと、アメフトのスター選手であるフラッシュ・ゴードンさんが、宇宙征服を目論む悪の皇帝ミンをやっつけるために宇宙を駆けずり回るぞ~!お~!っていうお話。
つーか、話の中にフラッシュ・ゴードンが出て来すぎだろ(笑)。
だってもう、映画として話のバランスがぶっ壊れるギリギリってくらい、異様な頻度でフラッシュ・ゴードンが出てくるし、途中なんかもうフラッシュ・ゴードンの話しかしてないんですよ。
「フラッシュ・ゴードン」でフラッシュ・ゴードンを演じていたサム・ジョーンズ本人が出ます。
とまあ、最初から最後までオモロかったんですが、ちょっと難点を挙げると、クライマックスでテッドを襲う悲劇の後、テッドが復活するまでがアッサリしすぎですよね。そこにもうひと工夫欲しかったというか。
ジョンがテッド無しで自立した生活を送れるように何らかの努力をして成長するなり、なんかもうすこしジョンとロリーの成長があってから復活して欲しかったというか。テッドを疎ましく思っていたジョンの恋人ロリーがテッドの存在を認めて星に祈った、って事なんでしょうけど、正直、復活が早すぎる感は否めないですよね。
まあ、「テッドが復活してまたどうせ2人でダラダラすんだろ?」って爽やかな諦観が漂うエンディングも悪くなかったんですが。
ラストのこの表情もすごく良かったしね。ラストで一番良い笑顔するんですよね~。ズルイよね~!
エンディングといえば、ラストの後日談のテキトーさには胸を打たれましたね。これまでのストーリーと全く関係ないアイドル俳優の写真で映画が終わるっていう、『映画作ってる途中で飽きてどうでもよくなってきたんじゃないか?』ってくらいのヤケクソっぷりで好感しか持てませんでした。