なんといっても映像の美しさが素晴らしい!
冒頭から凄いんですよ!水面ごしの日光演出 on 3D。水中にさしこむ太陽の光が3Dで飛び出します。
3Dの大自然映像にテンションが上がります。
こんな3D映像の感じ方もあったのかと感心しきり。
さすがジェームズキャメロン。偉そうに3D映画の御意見番やってるだけあります。
ただね、映像的には驚かせてくれるんですが、ストーリー的にはなかなか予想の上を行ってくれない。
もうジェームズ・キャメロンはストーリーなんか二の次なんでしょうか。
アトラクションムービーのアトラクション部分に特化しすぎて、ストーリーが凡庸な感が否めませんでした。
・遭難・あるいは閉じ込められる
・外部との連絡が途絶え孤立する
・ここから脱出するぞ!おー!
・死ぬ前にやたら切ない独白をする奴。
・ワガママなバカ女がそのバカさゆえに死ぬ。
・いけすかないボンボン野郎が裏切る。
・助かる人数が限られている。
・主人公と最も親しい仲間が死ぬ。
・主人公1人だけ帰ってくる。
・・・的な、この手の脱出サバイバル系映画にありがちな王道パターンをなぞりまくり!
登場人物の死に方が洞窟とさほど関係ない気が・・・。
出来れば大自然の猛威に巻き込まれて死んでいってくれた方が、こちらとしてももっと「洞窟チョー怖え!!って感じで素直に畏怖出来たんですが。「俺たちの怖がりたい洞窟」とはちょっと違うなあって感じでした。
潜水病が再発して死ぬジョージも、
その前の段階から「潜水病はつらい」だの「血がビールのように泡立つ」だの、潜水病の恐ろしさを得々と語るので、もう誰がどう見てもこのあとジョージが潜水病になる伏線だろっていう。親切に「みなさーん!伏線ですよ~!ふ・く・せ・ん~~~っ!」って教えてくれます。
死ぬ直前にわざわざジョシュに向かって父・フランクのすべらない話や、彼がいかにグレートな男かを伝えるんですが、まるで「オレ、死ぬ時はジョシュにこのハナシしてあげよーっと」つって事前に決めてたんじゃないかってくらいの語りっぷりです。出し惜しみしてねーで生きてるうちに教えろよ!みたいな。
「お前の父ちゃん、超グレイトだったぜ!」(大意)
そんな中でも特に女性キャラ2人の死にざまの描き方が若干偏向ぎみというか、もう単なるバカとしてしか描かれてない気がするんですよねぇ・・・。
「ね?女ってバカだろ~?」みたいな。まあ考えすぎでしょうけど・・・。
あんま洞窟とか関係なくうっかり死んじゃう女の人。
今となっては役名すらわかりません。
ヴィクトリアなんか、いかにもジェームズ・キャメロンが好きそうな「アクティヴな体育会系オンナ」って感じで、彼女が登場した時はもっと良い役なのかと思ってたんですがね。
この辺まではイイ女。ジェームズ・キャメロンは美人をやたらヘリに乗せたがりますね。
ところが蓋を開けてみれば「ウェットスーツ着たくない」だの「これは出来ない」だの・・・。
普通、死ぬか生きるかって時にそんなワガママ言うかね?
「あれヤダ!」「これヤダ!」ワガママ言いつつも・・・
彼女なりにしぶしぶ頑張ってはいたんですけど・・・
結局死にます。南無~。
とはいえ、メンバーが死ぬシーンはスリラー映画ばりにおっかない。
おっかない場面は超おっかなく描写して、どこがどうなって死んだのか『死にざまをちゃんと見せる』っていう所が好感持てますね!
そんな感じでメンバーが1人、また1人と命を落としていく訳ですが。
次々に死んでいくんだろうなって事は想定の範囲内なので悲壮感や驚きを余り感じない。「さて、次は誰が死ぬ番かな~?」っていう死亡順トトカルチョくらいしか出来ない。
だけどね、そんなに駄目なトコばかりじゃなくて、良い所もちゃんとありますYO。
それは父と息子の関係。
父フランクが息子ジョシュに対していかに厳しい教育をしてきたかって事が、特に説明が無くても登場人物のセリフの端々で分かるようになっているんですよね。
ジョージ達がフランクに忠告するセリフ「息子に厳しすぎやしないか?」「ジョシュは良い子なんだから優しくしてあげて」。
あるいは主人公の思い出話「父親に“洞窟が好きか?”なんて聞かれることさえなかった」。
駄目な邦画ならわざわざ子役を使って再現してみたりして余計な回想シーンを足してみたりしそうなもんですが、そんな野暮な事はしない訳ですよ。
このあたりのスマートな省略が、スッキリしていて観やすいですね。
初めは対立していた父親と息子が、だんだんと和解して行く様子。
ロッククライミングが得意な息子が活躍するシーンで初めて父親の表情が緩んで笑顔がこぼれる場面。
すこしずつ父親越えしていこうとしてる息子を嬉しそうに見守る父の表情。
仲間が次々と死んでいき、父子2人きりで行動するようになってからは、父親が息子の世話になる事も増えて、いつの間にか息子もリーダーシップをとって行動し始めます。
崖を登るとき、息子の差しのべた手を父親が掴んで登るシーンなんかも、
息子の腕を父親がガッチリ掴むのがアップで映るあたり、明らかに「親子の絆がガッチリ結ばれた瞬間」を感じてグッときちゃいました。
そして父との死別シーン!
もう自分は助からないと悟った父フランクが、かつて自分も瀕死の仲間にそうしたように自分を水の中に沈めて殺すようにと、息子ジョシュに指示するんです。
この辺もベタな展開なんですけど、もう映画も終盤なんで多少ベタ慣れしてるというか「ここまできたらベタなお話がみたい!」って思っちゃってるんですよね。ありがちな展開ですけど、ここも思わずグッときちゃいました。
そんな感じで、この父子の関係には何度もグッときちゃったんですが、、、
グッときちゃっただけに、つくづく父の死因が残念すぎる!
あんなファイナルデッドシリーズみたいな死に方あんまりだよ!
なんかもっとドラマチックな死に方用意してあげてよ!
映画自体ここまでベタなストーリーにしちゃってるんだから、死因も「自分の命と引き換えに息子を救った」とかさ、それぐらいベタにやってほしかった!
息子ジョシュ役のリース・ウェイクフィールドくんの演技も素晴らしかったですね。
聞けば彼、この「サンクタム」でハリウッドデビューなんだそうです。
弱冠17歳のひ弱な青年が 死を目前にして、一人前の男になっていく様子が良い。
最初は「温厚で良い奴だけど、どこか甘ったれてるキャラ」だったんですけど、物語が進むにつれて、主人公ジョシュの表情もりりしく変わっていくじゃないですか。
成長が表情に表れている。その表情で全てを物語れる演技力が素晴らしかったです。
ちなみに、こないだも当ブログ記事に書きましたが、
キャメロン監督は先日劇場公開された『ピラニア3D』に関して
「こんな低俗な作品は3D映画を駄目にする!」とディスってましたが、
ジェームズキャメロンの監督デビュー作コレですからね!
殺人魚フライングキラー [DVD]
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