2011年3月11日の東日本大震災から7か月後。
ノンフィクション作家・石井光太氏の名著『遺体―震災、津波の果てに』が上梓されました。
震災による犠牲者の遺体および遺体安置所にまつわる様々なエピソードや生き残った人々の群像劇が、綿密な取材とインタビューによって織り成される、といった内容。
著者である石井氏が目の前の惨状や悲劇から目を背ける事無く、むしろ被災地の悲しみに寄り添うかのように丁寧な取材を重ねているのが印象的。
まさに壮絶としか言いようの無い光景が、冷静かつ多角的な視点で描かれていて、素晴らしいルポルタージュ本です。
そしてこの本は出版直後から様々なメディアに取り上げられ、話題が話題を呼び、また石井氏が各メディアに露出した際の喋りの達者具合も相乗効果を生み、結果として2011年のベストセラーとなったのでした。
各界からの評価も非常に高く、第18回 「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」で「震災・原発報道特別賞」を受賞。さらに第34回講談社ノンフィクション賞と第11回新潮ドキュメント賞にノミネートされました。
ほんでもって情熱大陸にまで取り上げられました。
ところで。
なぜ私がそんな一昨年のベストセラー本の話をしているのかと申しますと、この本がこのたび映画化され、『遺体 明日への十日間』なるタイトルで2013年2月23日(土)から全国公開されるからであります。
映画「遺体 明日への十日間」公式サイト
洋画・邦画を問わず、ベストセラー本が映画化されるという事はよくある話なので何の問題も無いかと思われます。
個人的には、やけに説明的で「泣かせまっせ~」感溢れる予告編が若干気になるものの、エンターテイメントビジネスという都合上、まあ仕方がない事でしょう。
ただ、私がひとつだけ危惧しているのは、監督・脚本が君塚良一だという点です。
君塚良一氏と言えば、かの「踊る大走査線シリーズ」の脚本を務めた事で有名ですが、当ブログでもその手腕を高く評価しており、2010年・映画ランキングでは君塚氏が脚本を手がけた「踊る大走査線 THE MOVIE ヤツらを解放せよ!」が59本中57位。翌年の2011年・映画ランキングではこれまた君塚氏が脚本を手がけた「これでいいのだ!! 映画★赤塚不二夫」が81本中・最下位をマーク。さらにその翌年2012年の映画ランキングではこれまた君塚氏の脚本による「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」が94本中・90位をマークするなど、非常に輝かしい高成績を残しておられるのが現状であります。
では、君塚良一氏の脚本のどこが凄いのか?という点について率直に説明申し上げます。
まず、君塚氏は【大して深く考えてないくせに脚本にやたら社会問題を取り入れたがる】【社会問題を取り入れながらも、問題の理解がほぼ思い込みによるもの】といった点において類稀なる才能を遺憾なく発揮しておられます。
特に、「ネット社会」および「近頃の若者」を執拗に嫌う傾向があるものの、作品の端々から「実際よくご存知ないのだな、思い込みで嫌っておられるんだな」という事がつぶさに見て取れる、そんな一目瞭然の間抜けぶりもキュートかつチャーミングとしか言いようがありません。
また、君塚作品の特徴である「途中から何の話をしているのかよく分からなくなる」というあたりも、さすが、の一語に尽きるのであり、手がける脚本が必ずちゃんと酷いという、ある意味天才ではないかという疑念すら湧く次第でございます。
最高の原作を最低の監督が撮る、という映画本編と関係ない部分で悲しい結末を迎える事のないよう、若干の距離を置きつつ生暖かい目で見守っていたい、そんな気分に浸っています。
しかしまあ、そんな事は割とどうでもいい事案でして。
結局のところ、私が言いたいのは、ただ1点。
一体全体、どういう英才教育を受ければこんなに情報量の多いボディになるのか?という事に尽きます。
今そんなことばかり考えています。なぐさめてしまわずに。
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