『モテキ』観てきました!
今日も大いにネタバレします。
今回の映画版に先行してTVドラマ版っていうのがあったわけですが
映画版ではキャストも豪華になり、ストーリーもよりシャープになってたり、小ネタの挟み方や過去の映画作品やPVオマージュの再現具合など、いちいちブラッシュアップされていて、『なるほど~!そういうやり方できたか!』と感心しながら観てました。
良くも悪くもサービス精神の塊のような映画だな、と。
一言で言うなら、過剰なまでに気が利いてる映画ですよね。
映画冒頭から主人公・幸世(森山未來)がコンビニでお弁当あっためてもらってる間に立ち読みしてるシーンからの、建物や道路に映像が映るシーン。
これはTVドラマ版第1話の冒頭と同じですね。気が利いてる!
あと、マジどうでもいい補足情報として、幸世が立ち読みしてるグラビア雑誌に載ってるのが熊田曜子・杉原杏璃・吉木りさ・cica・杉原杏璃・太田千晶あたりっていうその人選も『ナイスですね~』の一語に尽きます。
この辺のみなさん。
オープニングの「モテキ到来御輿」。
本編とはさほど関係ない「どうでもいい所」にこそお金がかかってるところもバカバカしくていいですね。気が利いてる!
気が利いてるといえば、やっぱり目を引くのは細かい小ネタの数々。
たとえば劇中で大量に登場するサブカルアイコン。
幸世とみゆき(長澤まさみ)のDOMMUNEデートで宇川直弘登場とか、
ロフトプラスワンデートで吉田豪・杉作J太郎・掟ポルシェ登場とか、その他にも神聖かまってちゃん・バナナマン・ピエール瀧・レイハラカミ・U-zhaan などなど、そうそうたる面子がカメオ出演していたり、TOKYO NO.1SOULSET・N'夙川BOYS・女王蜂・在日ファンク・ナキミソなんかのライヴ映像も挟みーの、幸世のTシャツがコレとかコレっていう。
幸世の部屋に並ぶサブカルアイテム達。
僕は幸世と同じ31歳ボンクラサブカル野郎なんで、この趣味趣向にはグッと込み上げる物が・・・。
しかもこれだけ容赦なきサブカル人選&アイテムをバッチリ揃えてるのに、サブカルの世界が少しもカッコ良く見えないっていうのも作り手のセンスの賜物だと思います。
そして面白いのが過去の映画やPVのオマージュ。
オマージュっていうより、ほぼパクリと言って差し支えないと思います。
たとえば、話題になったこのPerfume出演のミュージカルシーン。
これは映画『(500)日のサマー』のこのシーンが元ネタ。
ちなみにロケ地は東京事変「キラーチューン」PVのこの場所。
そしてこのミュージカルシーンのラストはBjork「It's, Oh, So Quiet 」PVのラストと同じ。
他にも、みゆき(長澤まさみ)の部屋で大恥を書いた幸世がトンネル内で道路の真ん中を歩くシーンは、U.N.K.L.E.の「Rabbit in your headlight」のPVそのまんまですね。ラストで爆発するのが人間と車と逆だけどね(笑)。
さて。。。
TVドラマ版と同じく今回の映画版でも4人のヒロインが登場しますが、今回は幸世が4人全員と恋愛するわけではなく、基本的にはみゆき(長澤まさみ)&るみ子(麻生久美子)の間ですったもんだし、途中で愛(仲里依沙)が花を添え、うだつのあがらぬ幸世を素子(真木よう子)が叱咤激励する、といった感じ。
4人とも超魅力的で可愛いんです。
もうこれは4人のお姫様が登場するおとぎ話なんじゃないかと錯覚するぐらいです。
男ばっかりの飲み会に突然長澤まさみと麻生久美子が途中参加するシーンなんて『それなんていうファンタジー?』って感じでリアリティに疑問を抱かざるを得ないんですけど、「美しいという事は良きこと」という漠然とした審査基準の上、OKだと判断しました!
さすが大根監督、女の子を可愛く撮らせたら天才ですね。ちょっとした表情の変化や仕草まで、すばらしいアングルと構図で見せてくれるし、1カットで撮るべきところは1カットで撮る、とか、観客が見たいと思っているものをきっちり見せてくれるサービス精神には感服いたしましたです。
・るみ子の話題に食いつく幸世を見るみゆきの表情
・早朝カラオケ屋の前で幸世に抱きつかれたるみ子の表情とセリフの言い回し。
・カラオケBOXに2人きりの幸世とるみ子の距離感。
・ライヴ会場でみゆきとるみ子が同時に振り返るシーン。
・土砂降りの中幸世がみゆきの家に行ったときの、みゆきの顔が見切れている構図。
ホント細部にまで気配りが行き届いてて最高でしょ。
大根監督自身も多くのシーンで手持ちカメラを持って撮影に参加したそうで、
『監督がカメラ持つって何だよ!AVの世界ではそれをハメ撮りっていうんだよ!この助平!でも超良く撮れてるよ!バカヤロー!』と意味不明の説教したくなります。
で、わざわざココに書くのもはばかられるほどですけど、
長澤まさみ演じるみゆきがカワイイ過ぎ!
この可愛さは、もはや超能力の域ですよ。
特に飲み会帰りに「この辺でドロンさせていただきま~す♪しゅしゅしゅしゅしゅしゅしゅ~(手裏剣を投げるジェスチャー)」なんて、可愛すぎて気絶しました。
はビニールカーテン越しだったけど、今回はちゃんと森山未來と直チュー(ジカチュー)もするし、それどころか水の口移しまで!!
なななな、なんたる破廉恥!
Masami to Mirai の Mouth to Mouth 、
つまり M to M の M to M ですよ!(上手いこと言うねオレ!)
森山未來の口からこぼれる水のしずくが朝日の逆光でキラキラして、こ、これはけしからん!けしからん!しかし羨ましい!いや、けしからんですよ!
とにかく、長澤まさみ×大根仁監督の化学反応が凄くて、とにかく長澤まさみの全魅力を余すところ無く撮りまくってるんですよね。みゆきが初めて幸世の家に行ったシーンも、キッチリ長澤まさみの脚ナメのアングルで撮ってるじゃないですか。流石わかってる!
「長澤まさみ最強説」を確固たる事実として証明して見せましたね。
長澤まさみの代表作を「モテキ」にしてしまったと思います。長澤まさみほどの女優の代表作を塗り替えるって、物凄いことですよ。
やっぱりあの『るみ子のクライマックスシーン』は凄まじかったですね。日本映画の歴史に残る名シーンだと思いますよ!
「ここ、笑うとこなのかな?」って思いながらも爆笑を禁じえなかったです。
るみ子の「悪いとこあったらいってよぉ~!分かんないからぁ~~!」「神聖かまってちゃんとかYOUTUBEで見るからぁ~~!」って号泣するとこなんか最高でしたね。
33の女が、あの勢いで、道端で、っていう条件も素晴らしいじゃないですか。
だってオレも全く同じような目に逢ったことあるもんねーだ(笑)。
ただ、
もう少し「るみ子がどういう女なのか」を丁寧に見せるべきじゃなかったかな?と。
だって、あの強烈な「るみ子のクライマックスシーン」よりも以前に、るみ子が恋愛に依存するタイプだって事は少しも説明されませんよね。
なのに幸世に突然「重い!」とかキレられて。
観てる側としては「そうかな?」って思っちゃいました。
麻生久美子も凄く良い演技してたし(明け方のカラオケ屋の前で幸代を好きになる瞬間の表情と「うん、がんばる」の言い方なんか完璧!)、この映画の中ではかなり重要なキャラクターだと思うので、もう少し丁寧な描写を積み重ねていった上であのクライマックスがあれば、もっと幸世にもるみ子にも感情移入できた気がします。
今回は豪華女優陣が4人ということで、2時間の映画の中で4人全員の存在感を出すためには仕方ないことかもしれませんけどね。
真木よう子演じる素子ちゃん。
幸世が就職したナタリーの先輩社員です。
幸代に対して歯に衣着せぬ物言いでズバズバ厳しい事を言う姐御系女子なんですが、厳しさの中にも愛があるんですね。
「アジョシ」の韓国人刑事ばりの飛び蹴りまで飛び出す始末。(左:アジョシ 右:モテキ)
素子絡みのシーンで「こ、これは・・・!」と白眉だったのが、
幸世がみゆきに告白しようとする直前のシーン。
彼は自分を奮い立たせるためにYOUTUBEでももいろクローバーZ『走れ!』のライヴ動画を見てるんですね。
この時素子は幸世に対して「弱ってるときのアイドルソングは麻薬」「アイドルソングに洗脳されて告白しても現実ではドン引きされるだけなんだよ!」などと非常にごもっともな理論展開で厳重注意する訳ですが・・・。
もう一度言いますが、このとき幸世が見ていたYOUTUBE動画は、ももいろクローバーZ『走れ!』な訳です。
その後、紆余曲折あって、ラストで幸世がみゆきを全力疾走で追いかけるシーンになると、
素子は幸代に向かって「走れ~~っ!!」って叫ぶんですよね。
この『走れ!つながり』はちょっと震えました。
素子のこういう所で、厳しさの中にも幸世への愛を感じて「素子センパ~イ(;_;)」と滂沱たる涙を堪えずにはいられませんでした。
幸世って実は素子と付き合うのが一番成長出来て幸せなんじゃないかなと思うんですけどね。
仲里依沙演じる愛ちゃん。
墨さん(リリー・フランキー)行きつけのガールズバーで働く女の子の役です。
この「肉付き」をきっちり撮るあたりも流石「おぬし、解っとるな!」としか言いようが無いですね。仲里依沙の溢れんばかりの肉感を前に、我々はただ深く頷くのみでした。
彼女の肉付きの素晴らしさは「ゼブラクイーン」で証明済みですが、
もうコレみたいにキッチリ全身に部位を書いといてほしいくらいですよ!
彼女はどのタイミングでどういう演技や表情をすれば効果的かっていうことが解ってますね。
自分を客観視して良く見せる事が出来る子なんだな~と思いました。
という具合に、彼女が素晴らしい事は確かなんですけどね・・・。
で、この映画、仲里依沙って要る?
そして、主人公の藤本幸世を演じる森山未來くんですけども、彼がまた素晴らしい。
幸世のキャラクターを自分なりに咀嚼した上で演技してるところが好感が持てます。
彼の身体能力が異常に高いっていうのもポイントで、飛んだり跳ねたり踊ったり、側転したりエビ反りジャンプしたり、所狭しと動き回る様子が楽しかったですね。主人公の動きがオモロイっていうのはコメディ映画において重要な要素だったりしますから、とても良かったと思います。
僕が好きだったのは、
みゆきに「幸世くんじゃ成長できない・・・。」って、コテンパンにフラれた幸世が自転車で会社に戻るシーン。
あんなこっぴどくフラれたら、普通はもう家に帰るじゃないですか。夜も遅いし。
でも、会社に戻って、社会人として初めて1人で仕事をやり遂げるんですよ。ここで初めて社会人の男として1つ成長するんですね。
このくだりで特にオレがグッときたのは、幸世が自転車を抱えて階段を登るカット。
その時の幸世の表情にヤラレたんですよね。
やっぱあの場面でワンワン大泣きしてたら、それじゃ家に帰って枕を濡らすモードじゃないですか。
でも実際あの場面での幸世は悲しみに打ちひしがれつつ、それでも何かに向かって大きな決意をした表情なんですね。「俺も女を成長させてやるくらいの1人前の男になるんだ!」っていう。
それがあってのあの美しいラストシーンですよ。
無数のミラーボールの輝きに包まれたあの2人の結末。
その美しさの中に「きっとこの2人も長くは続かないんだろうな・・・」って思わせるような儚さも感じました。
最後になりましたが、気になるところをいくつか。
真木よう子含め、ナタリーの先輩社員が数名いらっしゃるんですが、その全員が脇役として雑ですね。
あまりにも背景になっちゃってますね。
コメディパートとしての存在だからそれでもいいのかもしれないけど、「この人達は幸世のためだけにナタリーで働いてるんじゃないか?」っていうくらい幸世のために動くんですよ。幸世と先輩社員の関係性がちょっと都合良すぎですよね。
あと、BGMが全部邦楽のボーカル曲なんですよね。
くるりの「東京」とか、N'夙川ボーイズの「物語はちと?不安定」とか色々かかるんですが、
登場人物の心情や映画のストーリー展開と、BGMの曲の歌詞がピッタリ重なってるんです。
これ、気の利いた演出のように見えますけど、登場人物の心情は役者の演技だけで充分わかるんですよ。
充分分かってる事をわざわざBGMの歌詞でも補足説明されてるようで、ちょっとクドイというか演出過剰に感じました。
いっそのこと、ボーカル抜きのサウンドトラックを作ってBGMにすれば面白かったと思うんですよ。
演出としてのクドさも薄れるし、観客がBGMの意味を想像する余地が出来るじゃないですか。
「あのシーンであの曲の伴奏が流れた→きっと歌詞がああいう内容だからだな」って、この映画の作り手の意図を察して楽しめるから。
TVドラマだと通用する手法が映画だと通用しない場合が多々あって、
たとえばTVドラマだと家で観るものだから、途中で時計を気にしたり、携帯に目が行ったり、途中でCMも入るし、観てる途中で集中を途切れさせる何らかの事情が挟み込まれますよね。
だからTVドラマの場合は多少説明過多なシーンだったり過剰な演出だったりがOKなんですよ。
でも映画となると、観てる側はTVドラマよりグッと集中して観るわけです。上映中はスクリーンしか観ない。
だからあまりに説明されたり大げさな演出があるとクドく感じるんですよね。
とはいえ、百戦錬磨の大根監督だから、そんなコトは分かっててやってると思うんですよ。
分かったうえで敢えてやってるんだと思います。それが上手くいってるかは別として。
とまあ、長々と書きすぎちゃいましたけど、すごく楽しい映画だし、邦画の歴史に残る名作だと思いますんで、絶対映画館に観に行ったほうが良いに決まっています。
原作を知らない人もTVドラマ版を観てない人でも観れる親切設計の映画ですし、安心して映画館へ足を運んでみてください。
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