かくかくしかじか諸々の事情あって、っていうか一言で言うと”暇だったので”、ワーナーマイカル筑紫野で『映画プリキュアオールスターズDX3 未来にとどけ!世界をつなぐ☆虹色の花』。タイトルながっ!
全くプリキュアに興味関心の無い私でしたが、これまでの劇場用作品をDVDで予習しまくってから映画館へ突撃しました。いやーもう、この世に存在する全ての色を見た!って感じで目がチカチカします。僕の視界に映る全てのものがパステルカラーに見えます。
せっかくなので、こういう作品こそ真面目に映画評をやってみます。
以下、プリキュアを全く知らない三十路男のプリキュアDX3感想です。
まず最初に目に付くのがやっぱりプリキュアの数。
おびただしい量のプリキュアですけども、今回総勢21人のプリキュアが登場すると。
キュアブラック・キュアホワイト・キュアブロッサム・キュアパイン・ハンバーグこね太郎・靴下ぬぎまく郎・ヘラクレスオオカブト・蓮舫・ミッキー ローク・かかとガサガサ左衛門 キュアレモネード etc・・・。
総勢21人の歴代プリキュア達が登場するんですね。
で、これまでの劇場版シリーズで登場していた、かつてプリキュアに倒された悪役達も蘇ってきて・・・っていう。
その悪役の人も言ってましたよ『いつの間にか凄い人数だなプリキュア!』って。
そりゃね、あんた達がかつて劇場版で戦ってた時はプリキュアも2~3人だったでしょうからね。いつのまにか21人にもなってたらビックリするってもんですよね。
プリキュアが21人いるっていう事は21人分の変身シーンがある・21回変身シーンがあるって事なんですけど、
例えばプリキュアオールスターズ第1作目(ちゃんとDVDで予習しました)なんかだと、プリキュアが17人いて、17人分の変身シーンをキッチリ最初から最後まで見せるんですね。で、結果としてどうなってるかっていうと映画の尺の半分くらい変身シーンと必殺技シーンっていう、バランスとしてとんでもない事になってたんですけど。
しかし今回の第3作目だと、その変身シーンはちょうどよいダイジェストになってて、21人全員が変身する時間も4~5分に短縮されてるんですね。
短縮されてるとはいえ、ダイジェストの仕方が上手いから、観客が観たいプリキュアの変身シーンにはなってると思います。
今回の作品で特徴的かつ効果的な演出になってるのはプリキュアのチーム分けです。要するに計21人のプリキュア達を、TVシリーズの垣根を越えてシャッフルで3チームにグループ分けしてる訳です。
21人のプリキュア達がピンクチーム・ブルーチーム・イエローチームにそれぞれ振り分けられて、3つの異次元の世界にそれぞれ飛ばされるっていう話なんですね。
ピンクチームが砂漠・ブルーチームが海・イエローチームがすごろくの世界にそれぞれ飛ばされる訳ですけども。
これが非常に功を奏している。
総勢21人もいればどうしてもプリキュア1人1人の個性が埋没しがちになると思うんですけど、それを3チームに分けて、7人で1グループにすれば比較的没個性にならずに済む訳です。7人の中でそれぞれ個性を発揮すれば良い訳ですから。21人のなかでやるよりも7人でやったほうが比較的1人1人にスポットライトがあたりやすい。
なおかつ、ピンクチーム・ブルーチームはシビアなというかシリアスなバトルを繰り広げるのに対して、イエローチームはコミカルな戦いをする。イエローチームも最初はもぐら叩き対決!とか言ってまだ対決の体をを保ってたんですけど、だんだん「お菓子作り対決!」「お勉強対決!」「ダンス対決!」とか「カラオケ対決!」とか、もう戦いの体を成してないっていう。
ま、そんな感じでシリアスなピンクチーム・ブルーチームとお笑い担当イエローチームっていう対比によって飽きずに観れる。
しかも、シリアスなピンクチームとブルーチームも、ガッツとファイトで乗り切るピンクチーム・知恵で乗り切るブルーチームっていう対比が出来ててお話としてカブらない工夫がされてる。
で、TVシリーズの枠を超えてシャッフルしてチーム分けする事によって、TVシリーズにおけるいつもの相棒・いつものチームメイトが一緒にいない訳ですよ。だから必然的に違うTVシリーズのプリキュア同士の絡みも増えて、ファンサービスも満点っていう。
で、それだけじゃなくて、シャッフルチームにするっていう設定は物語上にも良い効果をだしてるんですね。
プリキュア全員集合映画も3作目になって、プリキュア達の結束が現状の段階であまりにも揺るぎないものになった後だから、単にプリキュア21人全員が力を合わせて戦うだけじゃ「どうせ勝つんでしょ?」っていう妙な安心感しか生まれない訳ですよ。
仲間の事を思いやって戦うとか、仲間を信じて戦うとかさ、それは今までさんざんやってきた事じゃん、って事になるんですけど、
今回のようにバラバラシャッフルでチーム分けされる事によって、これまで通りのプリキュアオールスターズの結束は通用しなくなった、という展開になってるんです。これまでのように21人全員でよってたかって敵を集団リンチして倒すってことは出来ないと。
しかも、TVシリーズにおけるいつもの相棒・いつものチームメイトとも離れ離れにされちゃってて、一緒にいない訳ですよ。いつもの相棒は違うチームで違う世界に振り分けられちゃってるから、いつものような戦い方は出来ない状況を強いられる。いつもの戦いとは勝手が違う訳です。
今まで培ってきた相棒とのコンビネーションも意味を成さないし、いつもの相棒との合体必殺技も使えない。
だからこそ、違う世界で頑張っているであろういつもの相棒やチームメイトに想いを馳せて、今は離れ離れだけど、仲間を信じて思いやるって事が重要になってくる、という展開になるっていうのは見事。
しかもこの離れた場所にいる仲間を信じて戦うっていう教訓がちゃんとプリキュアの成長につながっていて、「離れ離れでも仲間を信じて思いやっていれば、絆は途絶える事が無いんだ」っていうラストシーンに繋がっていくっていう。
歴代プリキュアたちは、テレビシリーズとか過去の劇場版の中で何回も世界を救ってきてる訳ですから、さんざん成長を遂げてるんです。
だから今更成長するような部分も少ない。成長するのびしろの部分が少ないわけ。
じゃあどうしたか?それは今までプリキュアオールスターズのみんなが経験してこなかった困難を乗り越えさせるしかない訳です。
彼女たちが今まで経験しなかった苦しみ困難とはなにか?
それは大切な仲間たちとの『離別』「別れ」ですよ。
それはチームがシャッフルされることで起こった仲間との一時的な離別でもあり、その後に起こる愛する仲間との永遠の別れ、でもあるわけです。
オールスターズ第1作目でプリキュア達が出逢い。第2作目で絆を揺るぎないものにして、第3作目で離別・別れに直面し、乗り越えようとするっていう。
とはいえ、まあ勿論「子供向け映画」ですから、あまり複雑なストーリーテリングは出来ないっていう制約の中ではありますけど、
「シャッフルチーム制度」というたった1つのアイディアが、ファンサービスにもなってて、ストーリーを程良く複雑にして観客を飽きさせないスパイスにもなっている。その上、プリキュア達に更なる成長を促していて、さらにそれがストーリーを走らせて結末まで繋がっていく。シャッフルチーム制度っていう1つの設定が、ここまで物語を大きくしていくという、実は非常に良く出来た構成なんですね。
”『子供向け映画』っていう制約の中では ” って条件付きではありますが、よく出来てるな、とは思いました。
という風に、映画としての構成だったり部分部分ではよく出来てると思うんですが、1つの物語としてはやっぱり杜撰なところが目立つ。
歴代のプリキュアが勢ぞろいして最近のファン・昔からのファンの両方が楽しめて、全員の変身シーンと必殺技のシーンも見れて、全員集合の画ヅラもあり、TVシリーズの敵も大集合して、ファンサービス満点と。ファンにとってはそれで充分なんです!って人も沢山いるんでしょうけど、逆に、『むしろファンなんだったらそんな程度で満足してんじゃねーよ』と。
これまでのプリキュア劇場版でも、お話の杜撰さっていうのがすごい目立つなと思ってたんですけど、今回もその杜撰さはあまり改善されてないと思うんです。
「いやいや、これは子供向け映画だから」って声もあるかと思うんですけど、子供向け映画と子供騙し映画は違いますからね。
プリキュアを好きな子供を連れて来た大人だってお金払って映画を観てるんだし、実際「大きいお友達」も観に来てる訳だし、作り手側もそれを当て込んで作ってるんだろうから、「子供向け映画だから」というのはあまり言い訳にならないんじゃないかな?
という訳で色々突っ込んでいきます。
今回のこの映画は、歴代劇場版のボスキャラクターたちがブラックホールってボスキャラの力によって甦り、全てを暗黒の世界にしようと、プリキュアたちと妖精の世界を結んでいる奇跡の花であるプリズムフラワーを狙ってくる。っていう話なんですけどね。
まず事前に『プリズムフラワー』がどういった役目を果たしているのか、どの程度重要な物なのかっていう事前の説明が薄いから、それが失われると何故困るのかわかんないまま話が進むから事の重大さが分かりにくいし、「プリズムフラワーが失われるとすべてが暗黒の世界になる」って設定も、そもそも「すべてが暗黒の世界になる」っていうのが理屈として抽象的すぎて一体全体どういう状態なのか分かんない訳よ。プリズムフラワーに関する全ての情報が漠然としてる。プリズムフラワー情報がぼんやりしてるから、それを奪おうとしてる悪の一味の狙いもぼんやりしてる。
で、これは今までのプリキュアDXオールスターズシリーズ全体にも言える事なんですが一般市民が何の被害も受けないから、これまた事の重大さが分かりにくい。
「誰かが人質にとられた」とか「一般市民が命の危機にさらされてる」なんて事でもあれば、「一刻も早くなんとかせねば!」って気持ちにもなるんでしょうけど、今回のこの映画で起こる一般市民への弊害って言ったら、暗雲が立ち込めて世界が曇るっていう事くらいなんですよね。日照時間の問題のみじゃねえかっていう。
そんでもって、やっぱこの物語全体を覆うご都合主義には閉口せざるを得ません。
これは目に余るものがあると思います。
物語全体が一事が万事ご都合主義的で、ゆえに、シャッフルチーム制だったり、プリキュアの成長だったり、せっかくの良い所が全部台無しっていう。
一口にご都合主義って言っても、
例えば「プリキュア全員が変身してる5分間の間、敵がじっと待ってあげてる」とか、そういう事は言いませんよ?
それはヒーローモノ映画ですから、それぐらいは勿論目をつむります。
■ご都合主義その1
まず映画の導入部分・プロローグの部分ですけど、スイートプリキュアの2人がたまたま遊びに来ていたショッピングモールに、たまたま他のプリキュア達19人が遊びに来ていて、そこにたまたま妖精の国と繋がってる出入口が開いて、そこにたまたま悪の一味が狙いを定めて押し寄せてくるっていう。事の発端の部分を全部『たまたまそうだったから』っていう事で片づけちゃうのは杜撰すぎやしませんかと。
で、こういう歴代オールスター物ってさ、歴代のヒーローがだんだんと集まってくるのが醍醐味じゃん?今回は映画開始と同時に、開始1秒目から21人全員同じ場所にいるっていうさ。それちょっとストーリーテリングの手間をハショりすぎじゃないの?っていう。
■ご都合主義その2
で、プリズムフラワーの存在そのものですよね。
プリキュア達がいるこの現実の世界と妖精の国とをつなぐ出入り口というか通路になってるのがプリズムフラワーだっていうんだけど・・・。
今更「2つの世界はプリズムフラワーで繋がってる」っていうのも相当後だしジャンケン的な理屈なのに、そこから更に「プリズムフラワーが失われると世界から希望が消える」とか「プリズムフラワーの力を借りればプリキュアに変身できる」「プリズムフラワーの力がなくなると妖精達がが妖精の国に帰らなくちゃいけないからプリキュア達ともお別れだ」とか後、から後からどんどん新しい理屈が出てくるんですよね。
その理屈も、実はこうでした!って事が後から判明したっていうんなら分かるけど、全部最初から分かってた事を今更のように『実はこうなのだ!』って説明し出すんですよ。じゃあ最初から言えよ、っていう。
そうやって後から後から後だしジャンケン的に「実はこうでした、でも実はこうでした、しかも実はこうなんです!」って理屈が追加されていって、作り手のご都合主義でなんでもアリになってって、どんどん物語が安易化していくんです。
だいたい、「プリズムフラワーが失われると世界から希望が消える」って話も、前作の「レインボージュエルが失われると世の中から希望が消える」っていうのと全く同じだしさ。それ1回やってるじゃん全く同じじゃん!っていう。
■ご都合主義その3
ミラクルライトが万能すぎてっていうか、威力が揺るぎなすぎてっていう問題。
ミラクルライトっていうペンライトみたいなアイテムがあって、それを妖精達が天にかざして『プリキュアに力を~!』って叫ぶと、プリキュアにパワーがみなぎって、強くなるっていう、まあウルトラマンで言うスペシウム光線・ライダーでいうライダーキック的な、お決まりの展開があるんです。これ劇場版プリキュアのお決まりの展開なんですけどね。
ミラクルライトは1回しか使えない、とか制限がある訳でもないんですよね。結構最初の方から既にミラクルライト持ってて、それ使って敵を倒したりしてるし、いつでもどこでも使えるんですよね。いつでもどこでも何回も使えるんなら最初から使えよ!っていう。じゃあ最初からそうしてよ!っていうのもあるし、1つの話の中で何回も使うから、ミラクルライトのありがたみも薄れてます。
ヒーロー物のお約束って色々あるじゃないですか。
悪の組織が世界征服つって、かならず日本から狙うとか、最後必殺技1発で勝てるとか、そういうお約束はあってもイイんだけど、
このプリキュアっていう物語はそういうお約束すらちゃんと出来てないんですよね。
で、都合が悪いと『たまたまそうなった』って事で片づけるっていう怠慢ぶり。
なんで、せっかく中盤あたりまではプリキュアシャッフルチームっていう面白い構成で見せてたのに、お話が杜撰すぎてどんどん台無しになってくっていう、勿体ない映画なんですよね。
あと劇場版プリキュア全体に言える事なんですけど、大ボス・ラスボスの容姿が漠然としすぎっていう。ただなんとなく怖そうな顔がついた黒い塊っていう。そこらへんも凄いガサツな印象だし。
自分の好きなキャラがどういう風に登場してどういう風にどのキャラを守って、その時どういう曲使われてとか、そういうオタク的な見方が先行しすぎなんじゃないですか?それでいいのか?みんなプリキュアに甘過ぎるんじゃないのか?っていう。
とはいえ、これまでの劇場版プリキュアの中ではかなり良く出来てる方だと思います。良い所もいっぱいあるしね。
なんで、是非劇場に足を運んでいただきたい・・・いや、別にどうでもいいです。
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